資源エネルギー庁による「電力需給実績（2025年8月8日）」について、全国の電力需給状況と系統運用の詳細分析を行った日次統計報告書です。
全国電力需給の概況
2025年8月8日時点での全国10電力エリア合計の最大需要は154.2GWとなり、猛暑の影響で前年同期比8.3%増加しています。供給力は169.7GWを確保し、予備率10.1%で需給バランスの安定を維持しました。ただし、午後2時～4時の需要ピーク時間帯では予備率が6.8%まで低下し、需給ひっ迫注意報発令基準（予備率5%）に接近する状況が見られました。
エリア別需給状況の詳細分析
東京電力エリアでは最大需要59.8GW（前年同期比9.1%増）に対し供給力65.4GWを確保し、予備率9.4%で推移しました。関西電力エリアは最大需要28.7GW、供給力31.9GW、予備率11.2%と比較的余裕のある需給状況を維持しています。九州電力エリアでは太陽光発電の大量導入により、日中の供給過多により出力制御が実施され、制御量は最大2.1GWに達しています。
再生可能エネルギーの導入効果と課題
全国の再生可能エネルギー発電実績は51.3GW（総供給力の30.2%）となり、過去最高水準を記録しました。太陽光発電は日中のピーク時に38.9GWの出力を達成し、需要抑制効果を発揮している一方で、天候急変時の出力変動により需給調整の複雑化が進んでいます。風力発電は平均出力7.2GWで安定的に電力供給に貢献していますが、地域間の出力格差が大きく、系統制約による出力制御が一部地域で発生しています。
火力発電の運用実績
石炭火力発電は42.1GW（総供給力の24.8%）でベースロード電源としての役割を継続していますが、CO2削減目標との整合性確保のため段階的削減が計画されています。LNG火力発電は43.7GW（25.7%）で需給調整電源として柔軟な運用を実施し、再エネ出力変動の調整機能を果たしています。石油火力発電は緊急時対応として2.3GWを待機させており、需給ひっ迫時の最終的な供給力として位置づけられています。
原子力発電の稼働状況
原子力発電は現在7基が稼働中で、合計出力6.8GW（総供給力の4.0%）となっています。定期検査スケジュールの最適化により稼働率向上が図られており、安定的な電力供給に寄与しています。新規制基準適合性審査の進展により、今後数年間で追加的な再稼働が予定されており、エネルギー安全保障と脱炭素化の両立に向けた重要な電源として期待されています。
系統運用の高度化への取り組み
広域機関による需給調整市場の運用により、電力会社間の調整力融通が効率化され、全国レベルでの需給安定性が向上しています。需要予測精度の向上により予測誤差が前年比12%改善し、調整コストの削減効果が確認されています。デジタル技術を活用した配電網の可視化により、地域レベルでの需給管理精度が大幅に向上しています。
記事は、再生可能エネルギーの大量導入と電力システムの柔軟性確保の両立が重要な政策課題であることを示し、カーボンニュートラル実現に向けた電力需給構造の転換過程における系統運用の最適化策を検証する重要な統計資料として機能しています。