高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、高齢者雇用促進のための啓発誌「エルダー」の2025年8月号を発行した。この号では高齢者雇用における賃金制度をメインテーマとして、実践的な知識と企業事例を幅広く紹介している。
特集「高齢者雇用と賃金の基礎知識」では、戦力としてのシニア活用に向けた人事戦略について千葉経済大学の藤波美帆教授が総論を執筆し、高齢者雇用における適切な賃金・評価制度の重要性を解説している。また、社会保険労務士川嶋英明氏による各種調査データを基にした高齢社員の賃金実態分析、賃金の法的位置づけと同一労働同一賃金の解説、株式会社パーソネル・ブレイン代表取締役二宮孝氏による等級制度と評価制度の基礎知識、社会保険労務士法人かわごえ事務所代表川越雄一氏による在職老齢年金・高年齢雇用継続給付と賃金の調整、退職金制度の基礎知識まで、実務に直結する内容を体系的にまとめている。
リーダーズトーク第123回では、トラスコ中山株式会社経営管理本部人事部部長大谷正人氏が登場し、同社の先進的な高齢者雇用制度について語っている。同社は定年を68歳、雇用上限を78歳まで延長し、元気で安心して長く働ける環境を提供している事例として注目される。
連載コンテンツも充実しており、「マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生!Season3」では65歳超雇用推進助成金の活用について解説し、「偉人たちのセカンドキャリア」第9回では室町幕府最後の将軍足利義昭のセカンドライフを歴史作家河合敦氏が紹介している。
実践的な情報提供として、石川県ののいちバス株式会社の高齢者職場探訪、NPO法人安全技術ネットワーク理事長浮田義明氏(74歳)への生涯現役インタビュー、がんと就労の両立支援制度解説、労働法Q&A、人事用語辞典「リーダーシップ」解説など、多角的な内容を掲載している。
同誌はデジタルブック版、PDF版(全ページ19MB)、テキスト版の3つの形態で提供され、アクセシビリティにも配慮している。また、KREISEL(クライゼル)を活用した読者アンケートシステムやメールマガジン登録機能も整備されており、読者との双方向コミュニケーションを重視している。
技術継承をテーマにした「技を支える」vol.354では、40年以上培った精密板金加工技術が結実したヒット商品開発について利根通氏が語り、「イキイキ働くための脳力アップトレーニング!」第98回では篠原菊紀氏による認知機能維持のための実践的トレーニング方法を紹介している。
この啓発誌は、高齢者雇用の推進に取り組む企業や人事担当者、高齢労働者自身にとって有益な情報源として機能しており、JEEDの高齢者雇用支援事業の重要な柱となっている。