職場における障害者のコミュニケーション上の配慮と工夫について、情報共有の課題に関する研究結果から具体的な支援方法を解説したものです。
障害者職業総合センターでは、障害者が職場での情報のやり取りについてどのような課題に直面し、どのような配慮を必要としているかを明らかにするため、企業10,000社(有効回答1,217社、回答率12.2%)と障害者721人を対象としたアンケート調査、及び14社でのヒアリング調査を実施しました。業務指示に関する情報と業務指示以外の情報に分けて、認知機能障害(知的・精神・発達・高次脳機能障害)と感覚機能障害(視覚・聴覚・言語障害)の特徴を分析しています。
業務指示の伝達・把握における困難について、聴覚・言語障害と発達障害では企業と障害者の認識に乖離があり、障害者の方が企業よりも困難を感じる状況が多いことが判明しました。認知機能障害のある障害者に対しては、企業は指示内容をシンプルにして平易な言葉で伝える、複数の指示を区切って順番に伝える、優先順位を明確にするなどの配慮により認知的負荷を減らし、指示内容をその場で確認することで間違いを予防していました。
感覚機能障害のある障害者に対しては、見え方や聞こえ方に配慮したコミュニケーション手段を活用し、視覚障害者には拡大印刷や電子ファイル提供、聴覚障害者には手話・筆談・文字変換アプリ・Teamsチャット機能・文字起こし機能等を利用して業務指示が正確に伝わるよう配慮していました。
業務指示以外の情報取得については、聴覚・言語障害と発達障害で7割程度、精神障害・視覚障害・知的障害で4~5割程度が困難を感じています。企業は朝礼や定期ミーティングでの情報周知、上司による把握状況確認を実施し、障害者は上司・同僚への積極的な質問や良好な人間関係構築により自然な情報提供を受けられるよう工夫していました。一方、精神障害や発達障害では、休憩時間を一人で過ごし必要以上の情報に接しないことで心の安定を保つ配慮も見られました。
記事は、職場での情報保障と理解支援、さりげないサポートにより、障害者も自然に職場コミュニケーションに参加できる環境づくりが重要であると結論づけています。