独立行政法人経済産業研究所（RIETI）のファカルティフェロー森知也氏による人口減少下での日本の都市と地域の未来について、経済集積理論とデータを用いて分析した研究プロジェクトの概説文書です。
人口減少の現状と深刻性
日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計では、2020年の1億2,600万人から2120年には3,000万人から5,000万人程度まで減少すると予測されています。3,000万人は江戸期の人口規模、5,000万人は明治期の人口規模に相当します。
2024年の1年間で日本人は91万人、総人口も55万人減少し、県がひとつずつ消えていくペースで人口減少が進んでいます。このペースが継続すれば、133年で日本人が消滅、225年で日本が消滅する計算になります。出生率は2000年以降、2015年をピークに加速的に減少し、2024年には1.15まで低下しました。この値は社人研の悲観的な低位推計（1.13）とほぼ同じレベルです。
国際的視点での人口減少
人口減少は東アジアで特に顕著ですが、世界的傾向でもあります。国連の2024年推計では、世界の出生率も2050年には人口置換水準の2.1を下回り、アフリカでさえ2090年には人口置換水準を下回る見通しで、今後は移民による人口代替も期待できません。
研究の基本視点と問題提起
本研究では、50年ごとに人口が半減する将来でも実現可能かつ持続可能な方針を提示し、次世代への負担先送りを避ける建設的な縮小策を検討しています。国の東京一極集中「是正」政策や地方活性化の取り組みについて、限られた資本の下での選択と集中の必要性を指摘しています。
動画シリーズの構成
全7話構成の動画シリーズを通じて、データと経済集積理論を用いて50年先・100年先の日本の都市・地域の未来像を検討します。第0話（イントロダクション）、第1話（都市レンズによる地域経済分析）から第7話（地域で取るべき対策）まで、体系的に論じる予定です。
根本的問題への言及
個人主義の先鋭化により個人の権利は尊重される一方で、社会のヒエラルキーが崩壊し、人間関係が希薄化している現状を分析しています。地域コミュニティや家族内の共助関係が金銭によるサービス購入に変化する中で、子育ての困難さが増していることを指摘し、根本的解決のために家族のあり方から考え直す必要性を提言しています。
記事は、人口減少への対処療法ではなく、家族・社会構造の根本的変革の必要性を訴え、経済集積理論に基づいた建設的な縮小戦略の構築を提案しています。