人口減少が描く日本の都市・地域の未来像と政策的課題
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)は2025年8月8日、「人口減少下での日本の都市と地域の未来」と題する研究プロジェクトを開始し、急速に進行する人口減少が日本の都市と地域に与える影響について、森知也ファカルティフェローによる動画シリーズの連載公開を開始しました。
深刻化する人口減少の現実
日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計によれば、2020年の1億2,600万人から100年後の2120年には3,000万人から5,000万人程度まで激減すると予測されています。特に深刻なのは、2024年の1年間で日本人が91万人、総人口も55万人減少したことで、これは「県が毎年ひとつずつ消えていくペース」に相当します。出生率も2024年には1.15まで低下し、社人研の悲観的な低位推計の前提値1.13に接近しています。
世界的な人口減少トレンドと移民問題
国連の2024年推計では、世界の出生率も2050年には人口置換水準の2.1を下回り、最も出生率の高いアフリカでさえ2090年には人口置換水準を下回る見通しです。これにより従来期待されていた移民による人口代替も困難となり、日本は自国内での解決策を見つける必要があります。
建設的縮小への転換の必要性
研究プロジェクトでは、人口が50年ごとに半減していく将来において、東京一極集中の「是正」や個々の地方活性化といった従来の政策アプローチは実現困難であると指摘しています。代わりに必要なのは「建設的な縮小」であり、限られた資本の下での選択と集中を通じた持続可能な政策の実現です。
社会構造変化の根本的課題
動画シリーズでは、個人主義の先鋭化、社会ヒエラルキーの崩壊、人間関係の希薄化といった社会構造の変化が人口減少の根本要因であることを指摘し、地域コミュニティや家族内の共助関係が金銭によるサービス購入に置き換わることで、子育ての困難さが増していることを分析しています。全7話構成の動画シリーズにより、経済集積理論とデータを用いた50年先、100年先の日本の未来像を描き出します。