調査の目的と背景 本調査は、令和6年度経済産業省委託事業として、地政学的リスクの高まりや気候変動等の要因により脆弱性が露呈したサプライチェーンの強靭化に向けた製造業の現状と課題を分析し、政策支援の方向性を検討することを目的として実施されました。新型コロナウイルス感染症、ウクライナ情勢等の教訓を踏まえた包括的な調査となっています。
製造業のサプライチェーン現状分析 全国の製造業2,800社への調査により、67.3%の企業が「サプライチェーンリスクが高まった」と回答し、特に半導体・電子部品の調達困難が深刻化しています。原材料調達の地域集中度は、重要部材の78.2%が特定国・地域に依存しており、代替調達先の確保が急務となっています。一方で、国内回帰を検討する企業は34.7%、第三国への移転を検討する企業は28.1%となり、サプライチェーンの多様化が進んでいます。
リスク対応策の実施状況 在庫積み増しを実施した企業は72.8%に達し、平均で3.2か月分の安全在庫を確保しています。複数調達先の確保では、2次サプライヤー以下の可視化に取り組む企業が41.6%となり、前年度比18.3ポイント増加しました。デジタル技術を活用したサプライチェーン管理システムの導入企業は58.9%となり、特に大企業では84.2%が何らかのデジタル化を実施しています。
政策支援の効果と今後の方向性 サプライチェーン対策のための設備投資促進税制を活用した企業では、投資額が前年度比23.7%増加し、国内生産能力の強化が進んでいます。半導体・蓄電池等の戦略分野では、総額2兆円規模の投資支援により、国内製造基盤の再構築が着実に進展しています。今後は、中小企業を含むサプライチェーン全体の強靭化に向けて、総額1,200億円の新たな支援制度創設と、国際連携による調達多様化の促進が提言されています。