調査概要と背景 本調査は、令和6年度経済産業省委託事業として、アジア太平洋地域における経済連携協定(EPA)の進展と我が国企業への影響を分析し、今後の通商政策立案に資する知見を提供することを目的として実施されました。CPTPP、RCEP等の大型EPA発効後の貿易動向と企業活動への効果を包括的に検証しています。
貿易・投資動向の変化 RCEP発効後のアジア太平洋地域との貿易額は前年度比16.4%増加し、特に中間財の貿易が28.7%の大幅な伸びを示しました。日本からの輸出では、自動車部品が34.2%増、電子部品が21.8%増となり、関税削減効果が明確に現れています。対日直接投資も18.5%増加し、製造業を中心とした投資拡大が確認されました。東南アジア諸国からの投資は前年度比42.3%増と特に高い成長率を記録しています。
企業の活用状況と効果 EPA活用企業への調査では、78.9%の企業が「収益性が改善した」と回答し、新規市場開拓に成功した企業は63.4%に達しました。製造業では、原産地規則の活用により調達コストが平均7.2%削減され、サプライチェーンの最適化が進んでいます。中小企業のEPA活用率も前年度比15.6ポイント向上し、政府の普及啓発活動の効果が確認されています。
今後の課題と政策提言 地政学的リスクの高まりを受け、サプライチェーンの多様化と強靭化が急務となっています。調査では、友好国との経済連携強化に向けた新たな枠組み構築の必要性が指摘され、特にインド太平洋経済枠組み(IPEF)の活用促進と、デジタル貿易ルールの国際標準化への積極的関与が提言されています。また、中小企業のEPA活用支援として、総額180億円の新たな支援制度創設が検討されています。