【覚書の概要】
米国のトランプ政権は9月18日、英国との人工知能（AI）や量子技術など先端技術分野の協力強化に関する覚書「米英技術繁栄協定（Technology Prosperity Deal）に関する覚書」を発表した。この覚書は5月に合意された「米英経済繁栄協定」とは内容が異なり、通商措置ではなく戦略的科学技術分野での協力強化に焦点を当てている。
【協力対象となる戦略的技術分野】
AI・量子技術: 人工知能分野での協力強化を通じ、米英両国がAIの将来の覇権を握ることを目標としている。
民生用原子力・核融合: エネルギー分野での技術協力を推進する。
次世代通信技術: 第6世代移動通信システム（6G）、測位・航法・計時（PNT）などの次世代インフラ技術での連携を強化する。
研究セキュリティー: 先端技術の研究開発における安全保障の確保と、民間投資の重要性を明記した。
【政権の戦略的位置づけ】
世界的優位性の確保: トランプ大統領は「米国と同盟国の英国がAIの将来の覇権を握る助けとなる」と意義を強調した。ホワイトハウスのクラチオス科学技術政策局長は「米国が世界水準の技術を輸出し、科学的発見を加速し、イノベーション推進政策を世界に広げることになる」と述べた。
AI行動計画との整合: 今回の覚書は、トランプ政権が7月に発表した「AI行動計画」の方針と整合している。同計画はAI分野での米国の世界的優位性強化と、同盟国が戦略的競争相手の技術に依存することを防ぐため、米国製AIシステムの輸出促進を掲げている。
【民間企業の投資拡大】
トランプ氏の訪英に合わせて、米国のマイクロソフト、グーグル、エヌビディアなどが英国でのデータセンター開設や投資計画を発表した。これは米国製AI半導体の需要創出を目的としており、米国のビッグテックや半導体大手の投資拡大がトランプ政権の政策と連動した形となっている。