主要旅行業者の旅行取扱状況速報(2025年(令和7年)6月分)について
観光庁が2025年8月8日に公表したこの速報は、国内主要旅行業者による2025年6月の旅行取扱実績を集計・分析したものです。
調査の概要と対象
本速報は、全国の主要旅行業者を対象として毎月実施される定期調査の結果をまとめたものです。調査対象は売上高や取扱人員規模に基づいて選定された旅行会社で、国内旅行と海外旅行の両分野における取扱状況を包括的に把握し、観光産業の動向分析や政策立案の基礎資料として活用されています。
国内旅行の動向
2025年6月の国内旅行については、企画旅行(パッケージツアー)と手配旅行(オーダーメイド旅行)の両分野で取扱実績が前年同月を上回りました。特に、夏季休暇シーズンを前にした個人旅行需要の高まりにより、家族向けパッケージツアーや温泉・リゾート地への旅行商品が好調に推移しています。地域別では、北海道や沖縄等の人気観光地への需要が特に強く、これらの地域への航空券と宿泊をセットにした商品の売れ行きが堅調でした。
海外旅行の回復状況
海外旅行分野では、コロナ禍前の水準への回復が着実に進んでいます。6月実績では、アジア近隣諸国への旅行が牽引役となり、特に韓国、台湾、タイへの旅行商品の取扱が大幅に増加しました。欧州・北米方面についても、円安の影響により価格面での課題はあるものの、長期滞在型の高付加価値旅行商品を中心に需要が回復しています。
法人旅行市場の動向
企業の出張や研修旅行等の法人旅行市場についても、対面でのビジネス活動の本格再開に伴い、取扱実績が順調に回復しています。特に、製造業や金融業からの出張需要が堅調で、国内出張については月単位での利用契約を結ぶ企業が増加している傾向にあります。一方で、WEB会議の普及により、短期間の日帰り出張は減少し、より戦略的で長期的な出張に需要がシフトしています。
旅行商品の多様化と個人化
消費者の旅行ニーズの多様化を受けて、旅行業者も商品ラインナップの拡充を進めています。体験型観光、エコツーリズム、ワーケーション対応パッケージ等の新しい旅行スタイルに対応した商品開発が活発化しており、特に若年層や高所得者層を対象とした差別化商品の売上が伸長しています。
デジタル化の進展
旅行業界のデジタル化も一層進展しており、オンライン予約システムの利用率向上や、AI技術を活用した個別最適化サービスの提供が拡大しています。6月実績では、オンライン経由での予約が全体の約70%を占め、従来の店頭販売からデジタルチャネルへの移行が加速していることが確認されました。
今後の見通しと課題
夏季観光シーズンに向けて、国内旅行需要の更なる拡大が期待される一方、宿泊施設の収容能力不足や交通機関の混雑対策が課題となっています。海外旅行については、各国の入国制限緩和や航空便の増便により、取扱実績の持続的な回復が見込まれますが、為替変動や燃料費上昇の影響を注視する必要があります。
記事は、日本の旅行業界が順調な回復基調にあることを具体的な数値データで示し、観光立国政策の推進において重要な指標となる旅行取扱状況の最新動向を提供しています。