フィリピン統計庁（PSA）が8月7日に発表した2025年第2四半期（4～6月）のGDP成長率と経済動向の詳細を解説したものです。
GDP成長率の推移と目標達成
2025年第2四半期のGDP成長率は5.5％を記録し、第1四半期（1～3月）の5.4％をわずかに上回りました。ただし、2024年第2四半期の6.5％は下回る結果となりました。この水準は、フィリピン開発予算調整委員会（DBCC）が6月26日に修正した目標値5.5～6.5％の範囲内に収まっており、政府目標を達成しています。
産業別成長動向の詳細分析
産業別では、農林水産業が7.0％、鉱工業が2.1％、サービス業が6.9％と、主要経済セクターがすべて前年同期比で増加しました。特にサービス業では、商業（卸・小売り・自動車など修理業）が5.1％、政府機関・防衛・保安が12.8％、金融・保険が5.6％の成長を示し、経済の牽引役となっています。政府機関・防衛・保安部門の12.8％成長は、公共サービスの拡充と雇用創出に大きく寄与しています。
需要項目別の構成要素
需要項目別では、民間最終消費支出が5.5％、政府最終消費支出が8.7％増加し、堅調な内需が成長を支えています。国内総固定資本形成は0.6％の微増にとどまりましたが、財・サービスの輸出は4.4％、財・サービスの輸入は2.9％の増加を記録し、対外取引も回復基調を示しています。
金融政策と消費環境の改善
フィリピン財務省のラルフ・レクト大臣は、「昨今の成長は、インフレの持続的な緩和に伴う堅調な国内需要と、それに伴う消費者信頼感の高まりによって牽引されている」と分析しました。フィリピン中央銀行（BSP）が6月に実施した5.25％の利下げも、借り入れコストの低下と消費支出の促進に寄与しており、次回のBSP金融政策定例会合は8月28日に実施予定です。
今後の課題と戦略的方向性
経済企画開発省（DEPDev）のアルセニオ・バリサカン大臣は、「2025年の経済目標を達成するには、政府は国の輸出基盤と市場を多様化する必要がある」と述べ、「アジア市場での需要が旺盛な加工農産物は、半導体や電子機器に比べて付加価値が高く、潜在性も高い」と指摘しました。また、インドなどの他国との経済関係強化にも期待を示しています。
リスク要因と注意点
一方、フィリピン・アイランズ銀行（BPI）の主任エコノミストのジュン・ネリ氏は、「雨季による生産とインフラの停滞が、経済見通しを鈍化させる可能性がある」と警戒感を示し、「フィリピンに対する米国の相互関税引き上げにも考慮する必要がある」と外部リスクへの注意を促しています。
記事は、フィリピン経済がインフレ緩和と金融緩和により内需主導の安定成長を維持しているが、気候要因や国際貿易情勢の変化が今後の成長持続性に影響を与える可能性があると結論づけています。