講演概要
日本銀行の氷見野良三副総裁が2025年9月2日、道東地域金融経済懇談会において「最近の金融経済情勢と金融政策運営」をテーマに講演を行った。
米国新政権と経済・物価への影響
新政権の特徴: 氷見野副総裁は米国新政権について3つの特徴を指摘
- 政治・経済・文化、内政・外交を一体的に捉える思想
- 戦術レベルでは柔軟だが戦略レベルでは頑強な姿勢
- 通説にとらわれず力の源泉に立ち返った政策追求
通商政策の視点: 従来のワシントン・コンセンサス的な自由貿易理論と異なり、超大国では最適関税理論により一定の関税が有利になる可能性を言及。
物価情勢の分析
現状認識: 「現実のインフレ率はコメの値上がりとその波及を主因に物価安定目標の2%を上回っているが、基調的なインフレ率は2%より低い」
基調的インフレの定義: 一時的な変動を除いた中長期的な物価上昇トレンドを指し、食料価格上昇などの一時的ショックの影響を差し引いた落ち着き先のインフレ率。
賃金・物価の相互参照: 賃金と物価の相互参照メカニズムが働くことで基調的インフレ率が2%に向かうシナリオを想定。
金融政策運営の方向性
消費者物価統計では物価上昇率が既に3年余り2%を上回っているが、基調的インフレ率はまだ2%を下回っているとの認識のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的実現に向けた慎重な政策運営を継続する方針を示した。