2025年1-3月期の米国経済は前期比年率-0.5%と、2022年1-3月期以来12四半期ぶりのマイナス成長を記録した。主因は第二次トランプ政権の関税率引上げ前の駆け込み需要による輸入急増と個人消費の伸び鈍化である。国内民間最終需要(GDPの86%)は+1.9%でプラス成長を維持したが、2024年の+3.0%を下回った。
【個人消費の動向】 実質個人消費支出は2025年以降伸びが緩やかになっている。耐久財消費では関税率引上げを見越した駆け込み需要により2024年11月・12月に自動車・娯楽用品が増加、2025年1月に反動減、3月に再増加、5月に再度減少という変動を繰り返した。新車販売台数は3-4月に1,783万台・1,726万台(年換算)と2015-19年平均1,724万台を超えたが、5月には1,565万台まで減少した。
【消費者マインドの政治的二極化】 トランプ政権発足後、消費者マインドは支持政党により明確に二極化している。民主党支持層は2024年11月に10ポイント以上低下し2025年4月まで急激な低下が継続、一方で共和党支持層は同時期に15ポイント以上上昇し、その後も上昇傾向を維持している。
【設備投資・労働市場】 民間設備投資は2025年1-3月期に前期比年率+10.3%の急増を記録。特に情報通信機器投資が+72.9%と関税率引上げ前の駆け込み需要が顕著。労働市場では採用率・離職率・解雇率すべてが2020年2月を下回る水準で推移し、需給はおおむね均衡。失業率はFOMC参加者の長期見通し4.2%近傍で横ばい推移。
【住宅市場の転換点】 住宅市場は重要な転換点を迎えている。2025年4月の新築・中古住宅在庫月数は4.9か月と2015年11月以来の水準に上昇、適正とされる5-6か月に接近。S&Pケースシラー住宅価格指数は2025年3月に前月比-0.1%と2023年1月以来初の下落を記録。住宅販売者数が購入希望者数を約50万人上回り、2013年以降最大の需要不足となっている。
【金融政策】 FRBは2024年9-12月に累計1%ポイントの利下げを実施後、2025年1月以降4会合連続で据置き。FF金利は現在4.25-4.50%。2025年末まで0.5%ポイントの段階的利下げが見通されているが、長期中立金利をめぐる不確実性は拡大している。
これらの政策変化と経済指標の動きは、米国経済が構造的な転換期にあることを示している。