日銀レビュー:プライベートファンドを巡る最近の動向
研究概要 日本銀行は2025年9月12日、プライベートエクイティ(PE)ファンドとプライベートデット(PD)ファンドに関する最新の動向分析を公表した。執筆者は金融機構局の竹村啓太氏、岩村由子氏、沓脱誠氏。
PEファンドの現状 グローバル金融危機後に米国を中心に運用資産を拡大してきたPEファンドは、以下の課題に直面している:
- パフォーマンス悪化: 海外金利上昇に伴う投資先企業のバリュエーション低下により軟調なパフォーマンス
- 売却遅延: 投資先企業の売却プロセスが遅れている状況
- 市場環境の変化: 金融引締めサイクルが投資戦略に影響
PDファンドの動向 プライベートデットファンドは相対的に堅調な状況を維持:
- 収益性: 厚い融資スプレッドを背景とした堅調なパフォーマンス
- 競争激化: 市場参入者増加により競合が高まる状況
- スプレッド縮小: 競争激化に伴いスプレッドがタイト化する傾向
投融資先企業の状況 PE・PDファンドの投融資先企業は複合的な状況:
- 業績維持: 全体的に堅調な業績を維持
- 利払い負担増: 金利上昇により利払い負担に直面
- 信用力リスク: 信用力の動向に留意が必要な状況
国内金融機関への影響 邦銀や国内機関投資家の関与拡大により、わが国金融システムへの影響が懸念:
- 連関性拡大: 投融資を通じてPE・PDファンドとの連関性が高まっている
- システミックリスク: 金融システムへの潜在的な影響が拡大
- 監視体制: 今後の動向を注視する必要性が高まっている
本レビューは、プライベートファンド市場の成長とそれに伴うリスクの変化について、日本の金融政策当局としての視点を提供している。