米国の追加関税により通関業者や輸入業者の手続きコストが著しく増大し、業界全体が対応に苦慮しています。
複雑化する通関手続き
追加関税の複雑な仕組みが通関手続きを極めて困難にしています:
1. 相互関税の複雑性
- 輸入製品価値の20%以上が米国原産の場合、非米国原産部分にのみ課税
- 単一製品でも複数のHTSコードでの申告が必要
2. 232条関税(鉄鋼・アルミ)の課題
- 鉄鋼・アルミ派生品に対する50%の追加関税
- 含有する鉄鋼・アルミ材の輸入申告価格にのみ課税される複雑な仕組み
企業の現場からの声
建設機械メーカーの事例
「232条の50%追加関税は輸入価格の鉄含有量部分に課されるが、鉄の定義が不明確なため、自社で合理的に決定する必要がある。購入した鉄の重量ベースで計算しているが、正確な申告は極めて難しい」(在米日系メーカー、2025年8月28日)
自動車部品輸入商社の苦境
「部品や機械輸入では、使用されている部素材ごとに関税率や根拠が異なり、構成比に応じた正確な計算と顧客への明確な説明が必要。しかし、これらの行政手続きコスト増加分を販売価格に転嫁するのは困難」(日系商社担当者、2025年8月22日)
通関業者の資金繰り圧迫
全米で展開する日系通関事業者の深刻な状況:
- 関税の立て替え負担が10~15倍に増大
- 通常約1カ月の立て替え期間でキャッシュフロー圧迫
- 顧客からの回収リスクも高まる
主要な課題
- 計算の複雑性: 部素材ごとの関税率計算が極めて困難
- 定義の曖昧さ: 鉄などの含有量の定義が不明確
- コスト転嫁の困難: 行政手続きコストを価格転嫁できない
- 資金繰りの悪化: 通関業者の立て替え負担激増
- 時間不足: 適切な処理に必要な時間が確保できない
今後の展望
追加関税を巡る状況が刻々と変化する中、関税以外に発生する膨大な付随コストについて、取引関係者間でその負担をいかに協議・調整していくかが重要な課題となっています。企業は対応策の検討を急ぐ必要があります。