地域振興に向けた産学官連携施策のあり方及び大学の産学官連携体制の課題に関する調査分析について、2025年3月に文部科学省科学技術・学術政策研究所（NISTEP）が発表した調査研究報告です。
本調査は、我が国の研究大学が自らの研究力を向上させていく上で「組織」対「組織」の産学官連携活動に係る取組を始めとした各種外部投入を増加させるための戦略的な対応を行うことで、経営リソースの拡張を図ることが重要であり、文部科学省では、これまで「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」等の作成や産学官連携推進事業を通じて、「組織」対「組織」の産学官連携の強化に向けた取組を行ってきた背景を踏まえて実施されました。
調査分析では、平成28年11月30日に提言された「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」の多くの項目について、既に一定着手済という回答が得られた一方で、課題が無いというわけではなく、産学官連携の体制強化に向けて、「方向性を設定し、それらを実行し、活動を継発で終わらせず継続する」という一連のスキームが確立されていないことが指摘されています。
具体的な課題として、多くの大学でボトムアップな活動は一定進んできたものの全体戦略が不在で活動が拡大・継続しない状況や、全体戦略はあるものの指導的で具体的活動への落とし込みが進まない、必要な能力・経験を有する人材が不足している等の課題が確認されました。
調査では8大学を対象に、大学の強みに基づいた産学官連携にしたい、融合領域強化の方針を掲げるだけでなく具体的活動に落とし込みたい、地域や企業との具体的な連携に深けたい、必要な能力・経験を有する専門人材を確保・育成したい、本格的連携につながる機会を増やしたいといった5つの課題について詳細な分析が行われています。
記事は、大学における産学官連携体制の強化に向けて具体的な戦略と実行体制の整備が急務であり、各大学の状況に応じた体系的な解決策の検討と実施が必要であると結論づけています。