バイデン政権の競争促進大統領令が撤回され規制緩和へ転換
ドナルド・トランプ大統領は8月13日、ジョー・バイデン前大統領が2021年7月に発令した「米国経済における競争の促進」と題する大統領令(14036号)を撤回した。同大統領令は大企業による寡占市場や不要な規制で競争が抑制されている市場に対する法令の執行強化や規制の撤廃を目的としていた。特に支配的なインターネットプラットフォーマーによる合併の厳格な精査や、連邦取引委員会(FTC)によるインターネット市場での不公正慣行に関する規則策定などを求めていた政策が終了となった。
「米国第一」反トラスト政策への転換
司法省は今回の発表に関して、「米国第一」の反トラスト政策は「規制当局や官僚が結果を強制するのを助けるものではない」とし、「イノベーションと機会に対する障壁を取り除き、自由競争に対する規制負担を軽減する反トラスト法の執行を通じて、新たな米国の黄金時代を解き放つ」との声明を発表した。また薬価の引き下げや競争の障害となる規制撤廃、ハート・スコット・ロディノ法(HSR)の審査プロセスの簡素化などに注力すると述べている。
経済政策の3本柱における規制緩和の拡大
トランプ政権は関税、減税、規制緩和を経済政策の柱に据えている。関税については相互関税などによる追加関税、減税については「大きく美しい1つの法案法」によって実行している。規制緩和については、これまでエネルギーや人工知能(AI)の分野を中心に進めてきたが、今後は対象分野を拡大するなど取り組みを本格化させていくとみられる。
HSR審査プロセスの簡素化
HSRの基準を満たす取引の当事者は競合範囲の重複などについて、当局に対して事前に届け出書を提出しなければならないが、この審査プロセスの簡素化が進められる予定である。スコット・ベッセント財務長官は政権発足100日の声明で、「トランプ政権の経済政策の3つの柱『関税、減税、規制緩和』は独立した政策ではなく、経済成長と米国内製造業の活性化を推進するエンジンの相互に連携した要素だ」と述べており、規制緩和が他の政策と連動して進められることが明確にされている。