中小企業庁が2025年8月に発表した「大学起業部活動レポート」について、全国の大学における起業部の活動実態と成果を包括的に分析した調査報告書です。
本レポートは全国の国公私立大学における起業部・アントレプレナーシップクラブの活動状況を詳細に調査し、学生起業家の育成における大学起業部の役割と効果を実証的に評価した重要な調査成果となっています。対象は全国約780大学で、起業部設置状況、部員数、活動内容、成果指標、支援体制などの多角的なデータ収集と分析が実施されています。
起業部設置状況では、全国で156大学に起業部が設置されており、前年度比12％の増加を記録しています。設置大学の内訳は国立大学38校、公立大学15校、私立大学103校となっており、特に私立大学での設置拡大が顕著です。地域別では東京都、大阪府、愛知県などの大都市圏が多数を占める一方、地方大学でも地域活性化を目的とした起業部設置が増加しています。
部員数と活動規模では、全体で延べ6,800名の学生が起業部活動に参加しており、1部あたりの平均部員数は44名となっています。学年別構成では学部3年生が最も多く、次いで2年生、4年生の順となっており、就職活動を控えた学生の起業への関心の高さが確認されています。大学院生の参加も15％を占めており、高度な専門知識を活かした技術系起業への挑戦が活発化しています。
活動内容の分析では、ビジネスプランコンテストへの参加、起業家講演会の開催、模擬起業体験、地域課題解決プロジェクト、インターンシップ・メンタリングプログラムなどの多様な活動が展開されています。特にデザイン思考、リーンスタートアップ手法、ピッチ技術などの実践的なスキル習得に重点を置いた活動が増加しています。
成果指標では、起業部出身者による実際の起業件数が年間89件に達し、前年度比28％の増加を記録しています。業種別では、IT・ソフトウェア分野が最も多く、次いでコンサルティング、教育・研修、飲食・小売の順となっています。起業後3年以内の事業継続率は73％と高水準を維持しており、起業部での学習と準備が事業成功に寄与していることが確認されています。
大学の支援体制では、専任教員の配置、活動資金の提供、施設・設備の利用支援、外部メンター制度の導入、産学連携プログラムの実施などの支援メニューが充実しています。特に大学発ベンチャーの創出に積極的な大学では、知的財産の活用支援、技術移転の促進、研究成果の事業化支援などの高度な支援体制が整備されています。
外部連携では、地方公共団体、商工会議所、金融機関、ベンチャーキャピタル、大手企業などとの連携により、学生起業家に対する多面的な支援ネットワークが形成されています。特に地域密着型の起業支援では、地域の課題解決と学生の起業体験を結び付けた効果的なプログラムが展開されています。
課題と今後の展望では、起業部未設置大学への設置促進、活動の質的向上、卒業後のフォローアップ体制の充実、女性起業家の育成強化、国際的な起業家教育プログラムとの連携などが重要課題として整理されています。
記事は、日本の大学における起業家教育の充実と学生起業の促進において、起業部活動が重要な役割を果たし、将来の日本経済を担う起業家人材の育成基盤として着実に発展していることを示した重要な調査成果となっています。