農畜産業振興機構が欧州委員会による食肉の短期需給見通し公表について報告したものです。
欧州委員会が2025年7月27日に公表した農畜産物の短期需給見通しのうち、2024年の食肉(牛・豚・鶏)の需給実績と2025年の見通しについて詳細に分析されています。同委員会は農畜産物の短期見通しを年2回、中期見通しを年1回公表しており、欧州の畜産業界にとって重要な指標となっています。
牛肉の需給動向
2024年の牛肉生産量は665万6400トン(前年比3.0%増)となりましたが、2025年は域内牛群の縮小により657万トン(同1.3%減)と予測されています。EU産牛枝肉価格が記録的高値で推移しているため小売価格も高く、2025年の消費量は639万トン(同0.7%減、1人当たり9.9キログラム)に抑制される見込みです。輸出は南米との価格競争力低下により54万9000トン(同4.0%減)、輸入は高値によるメルコスール諸国からの安価な冷凍牛肉輸入増で36万9000トン(同5.0%増)と予測されています。
豚肉の需給動向
2024年の豚肉生産量は2124万2180トン(前年比2.0%増)となりましたが、2025年は繁殖用雌豚飼養頭数減少により2115万トン(同0.4%減)と予測されています。消費量は豚枝肉価格が高水準にあるものの鶏肉価格も高騰しており、1839万5000トン(前年並み、1人当たり31.7キログラム)と見込まれています。輸出は主要競合国との価格競争力低下により285万6000トン(同3.0%減)、輸入は英国からの輸入増で10万1000トン(同1.0%増)と予測されています。
家きん肉の需給動向
2024年の家きん肉生産量は1409万3011トン(前年比5.3%増)となり、2025年は飼料価格下落と価格上昇による生産意欲向上で1435万1000トン(同1.8%増)と予測されています。消費量は鶏肉価格が記録的高値ながら旺盛な需要により1320万3000トン(同2.2%増、1人当たり25.6キログラム)と見込まれています。輸出はアフリカ向け増加で205万1000トン(同2.0%増)、輸入は域内価格高騰により90万3000トン(同8.0%増)と予測されていますが、ブラジルでの高病原性鳥インフルエンザ発生による輸入停止が下振れ要因となる可能性があります。
記事は、欧州の食肉市場が価格高騰と供給制約により構造的変化を経験しており、今後の畜産政策や貿易戦略に重要な示唆を与えると結論づけています。