国際政策 第54回国際通貨金融委員会(IMFC)議長声明(仮訳).pdf(PDF:211KB)
概要
2026年10月17日にバンコクで開かれた第54回IMFCの議長声明。世界経済は相次ぐショックに予想以上に耐えている一方、バッファーが失われ、下方リスクや国ごとの影響のばらつきが残ると指摘した。委員会は、安定と幅広い成長を支える政策、多国間協調、脆弱国への債務・資金支援を確認し、IMFの政策見直し、クォータ改革、業務の現代化と人材の代表性向上を支持した。
要点
- 世界経済はショックに予想以上に耐えているが、バッファーの減少と下方リスクを踏まえ、強靭性を当然視すべきではない。
- 健全で一貫性のある政策と多国間協調を通じ、マクロ経済・金融の安定と力強く幅広い成長を目指す。
- 脆弱国への支援と、予見可能で秩序立った公的債務再編の改善を続ける。
- IMFの政策見直し、資金基盤、クォータ・ガバナンス改革、業務の現代化を進める。
概要
声明は、世界経済が相次ぐショックに予想以上に耐えている一方、バッファーが徐々に失われ、強靭性は保証されないとする。戦争・紛争は人道的犠牲と経済コスト、負の波及をもたらし、サプライチェーンの混乱や貿易を巡る緊張は不確実性と物価圧力を高めている。先進的知能に関する技術の進歩は投資と貿易を加速し、生産性向上の可能性をもつ。これまで世界の成長は概ね安定しているが影響にはばらつきがあり、低所得国や脆弱国が取り残されるリスクがある。
リスクは下方に傾いている。紛争や貿易緊張が強まれば、重要な貿易ルートの混乱、一次産品価格の上昇圧力、エネルギー・食料の不安定化につながり得る。システム上重要な国の国債利回り上昇、高い公的債務や借換え需要、技術の経済・金融面の影響を巡る不確実性は、マクロ金融面の脆弱性を増大させる可能性がある。技術・人口動態の変化、異常気象や自然災害、地経学的分断も政策上のトレードオフを複雑にしている。
影響
戦争・紛争は最も貧しく脆弱な人々に最も深刻な影響を与えており、世界経済の影響のばらつきにより、低所得国や脆弱国はさらに取り残されるリスクにさらされている。
詳細
委員会は、健全で一貫性のあるマクロ経済政策と多国間協調によって、マクロ経済・金融の安定と力強く幅広い成長を促す方針を再確認した。財政の脆弱性には直ちに対処し、財政健全化は、脆弱な人々や生産性・成長を促す優先投資を守りつつ、持続可能性の確保と必要なバッファー再構築を目指す。信頼に足る中期的枠組みを用い、中央銀行は各自のマンデートに沿い、物価安定へのコミットメント、データに基づく政策調整、明確な説明を続ける。政策の信頼性とインフレ期待の安定には中央銀行の独立性が不可欠とした。
委員会は国際基準を遵守しながら金融の脆弱性と安定リスクを監視・対処し、デジタル金融の安全、サイバー・レジリエンス、デジタル詐欺対策を強化する「バンコク・ブループリント」を歓迎した。先進的知能に関する技術やデジタル化を生産性向上に活用し、リスクに対処して恩恵を広く分配する改革を進める。過度なグローバル・インバランスや貿易緊張への対応、歪曲的政策の回避、サプライチェーンの強靭化にも協働し、安全で強靭なエネルギーフローと航行の自由を重視する。2021年4月の為替相場についてのコミットメントを再確認した。
改革や債務脆弱性に対処する国々を、健全なマクロ経済政策、国内資金動員、ガバナンス改善などを通じて支援する。対象には、脆弱で紛争の影響を受けた国や小規模開発途上国を含む低所得国、脆弱な中所得国が含まれる。公的債務再編については「共通枠組」の取組や「公的債務に係るグローバル・ラウンドテーブル」の作業を進め、予見可能で適時かつ秩序立ち、連携した実施を目指す。民間債権者を含む利害関係者には債務透明性の向上を求める。IMFと世界銀行の「3本柱のアプローチ」を加速し、持続可能な債務と改革・成長のアジェンダをもちながら短期的な資金繰り課題を抱える国への支援拡大を奨励する。貧困削減・成長トラストの自立的融資能力を支える保証を提供した加盟国に謝意を示し、他の加盟国にも速やかな提供を期待する。
委員会は専務理事のグローバル政策アジェンダと、IMFのサーベイランス、債務分析、融資、能力開発を強化する包括的な政策見直しの最近の承認を歓迎し、迅速で効果的かつ公平な実施を期待する。能力開発とサーベイランス・融資の統合強化を支持した。改革は加盟国によるリスク特定、不確実性への対応、強靭性と成長を促す政策枠組みの実行を後押しする。また、先進的知能に関する技術のマクロ経済面・政策面の含意について、IMFの進行中の作業を歓迎し、マンデートの範囲内での分析と提言を期待する。
委員会は、グローバル金融セーフティ・ネットの中心として、強固でクォータを基礎とし、十分な資金基盤を有するIMFへのコミットメントを再確認した。「第16次クォータ一般見直し」に基づくクォータ増資への同意について、国内承認を遅滞なく完了することを期待する。「ディリヤ指導原則」は「第17次クォータ一般見直し」を含む将来のクォータ・ガバナンス改革の議論を導く。
IMFの機動性と対応力を保ち、将来にわたり有効に機能させるため、先進的知能に関する技術の堅実な内部活用、業務の現代化、企業リスク管理の強化、スタッフへの投資を支持する。スタッフの質の高い作業と献身に謝意を示し、能力本位の制度の下でスタッフの地域別・女性の代表性を高める努力を奨励する。理事会および指導的地位における女性の代表性強化を重視し、自発的目標に向けて行動する一方、候補者は各加盟国の能力本位の方法で選出されるべきとした。
声明は、2026年の年次総会をバンコクで開催し、歓迎したタイ当局とタイの人々に謝意を示す。また、サウジアラビア王国のIMFCにおけるリーダーシップに謝意を示し、アルジャダーン大臣の議長任期の1年間の延長を歓迎した。次回会合は2027年4月にワシントンDCで開催予定である。