8月19日に東京で開催された第12回日本・エジプト経済合同委員会会議について解説したものです。
開催概要と重要性
日本・エジプト経済委員会(JEBC)とエジプト・日本経済委員会(EJBC)が主催した同会議は、2019年3月の第11回以来約6年半ぶりの開催となりました。エジプトからはマドブーリー首相が第9回アフリカ開発会議(TICAD9)にあわせて初来日し基調講演を行い、日本からは古賀友一郎経済産業副大臣らが出席しました。
戦略的重要性について、加留部淳JEBC委員長(豊田通商シニアエグゼクティブアドバイザー)は「エジプトは中東・アフリカ・欧州の物流拠点・戦略的要所で、日本企業にとってアフリカ市場への足掛かりとなる製造拠点として魅力的」と評価しています。
エジプトの投資環境改善
マドブーリー首相は投資環境の大幅改善を強調しました。為替政策の安定化として、2023年3月の柔軟な為替政策移行により外国為替市場が安定していることを報告しています。行政手続きの効率化では、企業設立手続きの円滑化と通関手続きの所要時間を2日間に短縮したことを発表しました。
首相はさらに「アフリカ、欧州、西アジアをスエズ運河や地中海で結ぶ戦略的立地を活かし、日本企業向け工業団地の設立と、自動車産業、再生可能エネルギー、海水淡水化設備の現地生産促進で日本企業の協力を得たい」と具体的な協力分野を提示しました。
包括的協力協定の締結
会議では合計14件の覚書(MOU)締結が発表されました。教育分野では、エジプト教育・技術教育省が東京都、カシオ・ミドルイースト・アンド・アフリカ、スプリックス、ヤマハとそれぞれ技術・職業訓練、初等数学教師能力開発、小中学校数学カリキュラム開発、音楽授業開発で協力協定を結びました。
インフラ・エネルギー分野では、スエズ運河経済特区(SCZONE)が伊藤忠商事、オラスコムとアンモニア燃料船舶向けバンカリング施設の設計・開発・運営について、東京都とはグリーン水素分野の開発協力についてMOUを締結しています。
企業間協力では、豊田通商がエジプトの産業・運輸省、投資・貿易省と自動車産業を含む経済発展に向けた相互協力のMOUを締結し、エジプト日本科学技術大学(E-JUST)との奨学金プログラム実施の意向表明書も発表されました。
記事は、6年半ぶりの開催となった同会議が、エジプトの投資環境改善と戦略的立地を背景に、教育からインフラまで多分野にわたる具体的な協力関係を構築する重要な転換点になったと評価しています。