農林水産政策研究所農業・農村領域の佐藤真弓主任研究官が執筆した、農業委員会や農協における女性の参画に関する既存研究のレビューと現状分析をまとめた研究動向報告です。
近年、農業委員会や農協での女性の参画が進み、新しい「食料・農業・農村基本計画」でも具体的な数値目標が設定されました。これら組織への女性の参画は、多様な意見反映や地域農業の活性化等に寄与することが期待され、一方で女性リーダーを輩出してきた女性組織の高齢化や女性参画状況の地域差など課題も多く、今後の推進策の検討が必要です。
男女共同参画推進の経緯として、1924年の農林水産省による「農山漁村女性の中長期ビジョン」策定以降、食料・農業・農村基本法(1999年)や男女共同参画社会基本法(同年)と連動して、農業委員会や農協役員への女性参画が法的に推進されました。2025年4月の新基本計画では、農業委員、農協役員、土地改良区理事の女性割合に具体的な数値目標が設定されています。
2016年施行の改正農業委員会法では、市町村長による委員の年齢・性別の偏りへの配慮義務が明記され、女性農業委員の複数選出や専任委員会設置が推進されています。JAグループでは1988年から女性の正組合員加入や運営参画が推進され、1995年の「JA女性組織綱領・5原則」では農協運営への女性の参加や男女平等が明記されました。
女性参画の必要性については、多様な地域成員の意見を反映し、誰もが暮らしやすい地域社会の実現に不可欠であり、農林水産省食料産業局総合食料産業・女性活動推進室(2022)がこれら公共性の高い農業関係団体への女性参画を問題とすべきとする論点も重なります。実際に、女性農業者は、行政や地域との関係性から、よりも女性たちの課題解決を支援し、ニーズに関した政策形成や意思決定を支援したことが挙げられています。
現在の参画状況として、全国の農業委員会で女性委員の割合が2024年時点で14.8%(前年比1.2ポイント増)、農協役員では8.3%(前年比0.7ポイント増)と緩やかな改善が見られるものの、政府目標の30%には大きく及ばない状況が分析されています。特に農協においては、家族経営協定締結者や青年・女性農業者の参画促進などにより地域の運営委員の選出などを関係される事項として指摘されています。
記事は、農業分野における女性参画の重要性が政策的に明確化される一方で、実際の参画率向上には継続的な取り組みが必要であることを示した重要な研究動向整理であると結論づけています。