住宅購入者の水災害リスクに対する意識の把握~水災害リスクの認知及び対策、居住地選択等に関する調査【本文】

住宅購入者の水災害リスクに対する意識の把握~水災害リスクの認知及び対策、居住地選択等に関する調査【本文】

調査概要

国土交通省国土交通政策研究所は、住宅購入者の水災害リスクに対する意識を把握するため、2025年1月に大規模なアンケート調査を実施した。調査対象は、川崎市、静岡市、岡山市、倉敷市、広島市の5都市において、2015年以降に戸建て住宅を購入した20代から60代の1,142人である。これらの都市は、2014年から2022年の水害統計において床上浸水及び全半壊の棟数が累計1,000棟以上、かつ2020年国勢調査で人口30万人以上の自治体から選定された。

回答者の約30%が何らかの水災害の被災経験を持ち、そのうち現在の住宅購入前に被災した者と購入後に被災した者がそれぞれ約半数ずつであった。分析では、現在の住宅購入前に「自宅の被災」「近隣等身近な場所の被災」を経験した186人を「被災経験あり」グループ、それ以外の956人を「被災経験なし」グループとして比較検討を行った。

水災害リスクの認知状況

ハザードマップの確認率

  • 被災経験ありグループ:85.5%
  • 被災経験なしグループ:71.4%

ハザードマップの認知は被災経験の有無に関わらず比較的進んでいるが、被災経験ありグループの方が統計的に有意に高い確認率を示した。

過去の水災害情報の確認率

  • 被災経験ありグループ:67.7%
  • 被災経験なしグループ:42.1%

過去の水災害情報の確認率は、両グループともハザードマップの確認率より約20~30ポイント低い結果となった。

総合的な水災害リスク確認率

ハザードマップ、過去の水災害情報、その他の方法のいずれか一つ以上により水災害リスクを確認した割合は:

  • 被災経験ありグループ:90.3%
  • 被災経験なしグループ:76.2%

被災経験なしグループのうち、従前の居住地が現在と同じ郵便番号エリアの場合、水災害リスクを確認しなかった割合が32.3%と有意に高く、近隣への転居の場合は水災害リスクに対する意識が低下する傾向が見られた。

浸水対策の実施状況

浸水対策実施率

何らかの浸水対策を行った割合は:

  • 被災経験ありグループ:82.3%
  • 被災経験なしグループ:49.0%

被災経験の有無により、浸水対策の実施率に大きな差が見られた。

具体的な浸水対策の内容

浸水対策を行った回答者における各対策の実施率:

  1. 標高や周辺のインフラ整備状況等を勘案し、浸水被害の危険性が低そうな地域を選んだ

    • 全グループで約45~47%が実施
  2. 浸水被害に強い建物構造にした

    • 自宅被災経験者:45.2%
    • 近隣被災経験者:24.1%
    • 被災経験なし:18.8%
  3. 自宅からの避難経路等を確認した

    • 近隣被災経験者:52.9%
    • 被災経験なし:52.1%
    • 自宅被災経験者:37.0%
  4. 水害保険加入について再確認した

    • 近隣被災経験者:46.0%
    • 自宅被災経験者:35.6%
    • 被災経験なし:27.8%

居住地選択における重視項目

共通して重視される上位5項目

両グループとも以下の項目が上位を占めた:

  1. 価格
  2. 敷地の広さや日当たり、風通しなどの空間のゆとり
  3. 治安
  4. 通勤、通学の利便
  5. 日常の買物などの利便

被災経験による差異

被災経験ありグループは、被災経験なしグループと比較して、17項目中11項目で有意に高い重視度を示した。特に以下の項目で差が顕著:

  • 周辺からの延焼のしにくさ
  • 歩行時の安全性
  • 災害時の避難のしやすさ
  • 子どもの遊び場、子育て支援サービス
  • 医療・福祉・文化施設など
  • 親・子・親せきとの距離
  • 福祉・介護の生活支援サービス
  • 近隣の人やコミュニティとの関わり

「水災害・津波被害の受けにくさ」については、被災経験ありグループで約70%が重視しているものの、グループ間で有意な差は見られなかった。

被災経験と転居パターン

自宅の被災を経験したグループの転居先:

  • 現在と同じ郵便番号エリア:47.7%
  • 同一市内(郵便番号は異なる):37.5%

自宅被災経験者の81.8%は2015年以降の被災であり、被災をきっかけとした転居であっても、被災前と大きく環境を変えない範囲内で住宅を取得する傾向が確認された。

重要事項説明の影響

2020年以降に住宅を購入した508人への調査結果:

  • 事前に危険性を認識しており影響なし:43.7%
  • 重要事項説明で初めて危険性を認識:15.4%
  • 説明を受けたが気に留めなかった:10.6%
  • 説明があったか覚えていない:23.8%
  • 説明を受けていない:6.5%

不動産事業者から見た影響

全日本不動産協会会員884社への調査(2024年11月実施)から以下が判明:

水災害リスク情報の重要事項説明追加の影響

  • 影響があると回答:28.2%(249社)
  • 影響の内容:
    • 需要・価格への影響:43.8%
    • 顧客の興味・関心:20.5%
    • 不動産事業界の興味・関心:5.2%

具体例として「ハザードマップで浸水想定区域になっているエリアを検討から外す人が増えた」「法人契約の承認が下りなくなった」等が挙げられた。

被災地の不動産市場

水災害被災地での取扱い経験がある307社の回答:

  • 取引が停滞していると感じる:61.2%
  • 通常より安値・低賃料で取引されていると感じる:51.1%

調査の意義と今後の課題

本調査により、被災経験の有無が水災害リスクの認知度や浸水対策の実施率、居住地選択における考慮要素に大きく影響することが明らかになった。被災経験がない場合でも約76%が水災害リスクを確認しているものの、実際の浸水対策実施率は約50%にとどまり、リスク認知と対策実施の間にギャップが存在することが判明した。

また、被災経験者は物理的な防災要素だけでなく、生活支援サービスやコミュニティ等のソフト面も重視する傾向が強く、被災時の経験が居住地選択に多面的な影響を与えていることが示唆された。今後は、継続居住者の水災害リスク認知や対策についての調査が課題として挙げられる。

※ この要約はAIによって自動生成されました。正確性については元記事をご参照ください。