【概要】住宅購入者の水災害リスクに対する意識の把握~水災害リスクの認知及び対策、居住地選択等に関する調査
背景・目的
近年頻発する水災害への備えとして各種対策が進められている一方で、浸水想定区域において住宅等の建築物が立地し、多くの人口が居住している実態がある。このような状況を踏まえ、さらなる対策の促進に資するよう、住宅購入者の水災害リスクに対する意識を把握することを目的として調査を実施した。
調査概要
住宅購入者への調査
- 対象:近年の水災害被災地域において過去10年間に戸建て住宅を購入した者
- 方法:インターネットによるアンケート形式
- 内容:住宅購入時における水災害リスクの認知及び対策、居住地選択等
不動産事業者への調査
- 公益社団法人全日本不動産協会から会員へのアンケート調査の結果の提供を受けて、国土交通政策研究所にて独自に集計・分析
- 水災害リスクが不動産取引に与える影響を整理
主な調査結果
住宅購入者への調査結果
回答者を現在の自宅購入前に被災経験がある者とそれ以外の者に類型化して分析を実施した。
水災害リスクの認知
被災経験があるグループは、被災経験がないグループよりも、ハザードマップや過去の水災害情報の確認、その他の方法のいずれか一つ以上により水災害リスクを確認する傾向が強い(約90%)。一方、被災経験がないグループも約76%が確認を行っており、被災経験の有無に関わらず水災害リスクの認知度は比較的高いことが判明した。
浸水対策
立地の検討、建物構造による対策、避難経路の確認、水害保険の再確認のいずれか一つ以上について、被災経験があるグループ(約80%)は、被災経験がないグループ(約50%)よりも実施する傾向が強いことが確認された。
居住地の選択
被災経験があるグループは、被災経験がないグループよりも転居先の居住環境として多くの要素を考慮に入れる傾向にあり、生活支援サービス、親族との距離、近隣コミュニティ等の要素も重視する度合いが高いことが明らかになった。
不動産事業者への調査結果
水災害リスクが不動産需要に一定の影響を与えていることや、被災地では不動産取引が停滞したり、通常より安値で取引されたりするケースが見られることが確認された。
調査の意義
本調査により、被災経験の有無が住宅購入者の水災害リスクに対する意識や行動に大きく影響することが明らかになった。被災経験がない場合でも一定程度の水災害リスク認知はあるものの、実際の対策実施には差があることが判明し、今後の防災施策検討において重要な示唆を提供している。