2015-2018年度における日本の税制改革が企業の税負担に与えた影響を分析した研究論文について解説したものです。
本研究では、2014-2020年度の法人税申告書データを用いて、税制改革が企業の平均的な税負担にどのような影響を及ぼしたのか、特に成長企業の税負担を減らしたかどうかを詳細に分析しています。研究手法として、バックワード・ルッキングの実効税率（ETR）を計算し、企業の売上高成長率、R&D集約度やその他の企業属性に対するETR及びその構成要因の感応度を推定しました。
分析の結果、第一に企業全体の平均的なETRは改革後に上昇したことが判明しました。第二に、企業全体の平均的なETRと比較して、成長企業やR&D集約的企業のETRは改革当初に低下したものの、その後は増加に転じることが確認されました。特に注目すべき点として、長期的には課税ベースの拡大が原因となり、この改革によって成長企業の税負担は減少しなかったという結論に達しています。
研究チームは、RIETIファカルティフェローの細野薫氏、大東文化大学の布袋正樹氏、早稲田大学の宮川大介氏で構成され、「企業ダイナミクスと産業・マクロ経済」研究プロジェクトの一環として実施されました。論文は2025年8月に発行され、ディスカッション・ペーパー25-E-072として公開されています。
記事は、日本の税制改革が成長企業に期待された恩恵をもたらさなかったという重要な政策的含意を実証データに基づいて明らかにしたと評価されています。