令和7年8月21日に開催された官民ビジネス対話において、石破内閣総理大臣がアフリカ開発会議（TICAD9）における日本・アフリカ経済協力の方針について演説したものです。
「援助から投資へ」の基本方針
石破総理は冒頭、TICAD30年の歩みを振り返り、「援助から投資へ」を日本・アフリカ関係の新たなキーワードとして提示しました。今回のTICAD9では「革新的な課題解決策の共創」をテーマとし、日本とアフリカが相互に学び合いながら課題解決に協力することを目指すと表明しています。署名文書披露式典では、前回TICAD8の3倍を超える300件以上の協力文書が披露され、日本企業のアフリカへの関与の拡大が具体的に示されました。
3つの重点協力分野の詳細展開
第一の重点として、持続可能な産業エコシステム強化による経済多角化を掲げ、武蔵精密工業がケニア・エチオピアで現地スタートアップと連携して電動バイクバッテリー交換ステーション事業を展開する事例を紹介しました。また、東京大学の松尾教授によるアフリカでのAI人材育成と現地就業支援の取り組みにも言及し、今後3年間で30万人の人材育成を実施する具体的目標を発表しています。
第二の重点である地域統合促進では、ナカラ回廊開発に関する広域オファー型協力により国境を越えた物流強化を図り、「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」の立ち上げを表明しました。第三の重点として、民間セクター主導による持続可能な成長に向けたファイナンス強化を挙げ、公的資金と民間資金の最適なブレンドによる産業育成を進める方針を示しています。
技術協力と知識共有の新たな枠組み
石破総理は、AI・DX・GXなど日本企業の技術・知見と、これまで正当に評価されてこなかったアフリカの在来の知恵や内発的な取り組み、アフリカの若者の活力と創造性を組み合わせることで、社会課題の解決と成長の実現を目指すと述べました。地球温暖化などの複合的危機に対応するため、日本・アフリカ双方の強みを活かした協力体制の構築が重要であると強調しています。
長期的パートナーシップの構築
演説では「日本はアフリカの皆様と共に笑い、共に泣き、共に汗をかきながら課題解決に取り組む」と表明し、相手を知り、寄り添い、共に解決策を創る丁寧なアプローチの継続を約束しました。これは単なる経済協力を超えた、長期的で互恵的なパートナーシップの構築を意味し、日本の対アフリカ政策の基本姿勢を明確に示したものです。
記事は、TICAD9を通じて日本がアフリカとの関係を従来の援助中心から投資・技術協力中心へと転換し、互いの強みを活かした持続可能な発展モデルの構築を目指すという、日本の新たな対アフリカ戦略を具体化した重要な政策演説です。