日本政策投資銀行新潟支店が株式会社日本経済研究所と共同で実施した災害食・ローリングストック食の市場動向と新潟県食品製造業の取り組みに関する調査結果を報告したものです。
調査の背景と目的
日本は地震、台風、豪雨などの自然災害が頻発する災害大国であり、災害時の食料確保は重要な課題となっています。本調査は、災害に備えた食料備蓄の重要性を啓蒙するとともに、新潟県の食品製造業の取り組みを支援することを目的として実施されました。特に、ローリングストック法という日常的に消費しながら備蓄する方法に適した食品（ローリングストック食）に焦点を当て、その市場性と可能性を探っています。
市場規模の推計結果
調査では、災害食・ローリングストック食市場の潜在的な市場規模を推計しました。その結果、年間の市場規模は合計1.4兆円に上ることが明らかになりました。内訳は、家計部門が1.2兆円と最も大きく、全体の約86%を占めています。公共部門は1,000億円（約7%）、企業部門は650億円（約5%）となっており、家計部門が圧倒的に大きな市場を形成していることが分かります。
ローリングストック法の特徴
ローリングストック法は、日常的に消費する食品を少し多めに購入し、使った分を補充しながら常に一定量を家庭に備蓄する方法です。従来の非常食のように長期保存を前提とした特殊な食品ではなく、普段から食べ慣れた食品を活用できるため、賞味期限切れによる廃棄を防ぎ、災害時にも日常に近い食事が可能になるという利点があります。この方法に適した食品は、常温保存が可能で、調理が簡単または不要で、栄養バランスが考慮されているという特徴を持っています。
新潟県食品製造業の優位性
新潟県は、米どころとして知られ、米菓、日本酒、水産加工品など多様な食品製造業が集積しています。これらの企業は、長期保存技術や品質管理のノウハウを蓄積しており、災害食・ローリングストック食の開発・製造において競争優位性を持っています。また、2004年の新潟県中越地震、2007年の新潟県中越沖地震など、度重なる災害を経験したことで、災害時の食料供給の重要性を深く理解しており、実践的な製品開発が可能です。
今後の展望と課題
災害食・ローリングストック食市場は、防災意識の高まりとともに今後も成長が期待されます。特に、高齢化社会の進展により、調理が簡単で栄養価の高い食品への需要が増加すると予想されます。一方で、市場拡大に向けては、消費者への啓蒙活動の強化、製品の多様化と高品質化、流通チャネルの整備などが課題として挙げられます。新潟県の食品製造業にとっては、既存の技術と経験を活かしながら、新たな市場機会を捉える重要な成長分野となることが期待されています。
記事は、災害食・ローリングストック食市場が1.4兆円規模の潜在市場を持ち、新潟県の食品製造業がその成長を牽引する可能性を持っていると結論づけています。