令和7年版厚生労働白書は、次世代を担う若者(高校生・大学生・社会人初期)を主要対象として、変化する社会における社会保障・労働施策の役割を解説したものです。
白書の構成と目的
白書は第1部(テーマ編)「次世代の主役となる若者の皆さんへ」と第2部(年次行政報告)「現下の政策課題への対応」の2部構成です。第1部では社会保障・労働施策の基本的役割から人口減少・超高齢社会での今後の方向性、第2部では働き方改革、年金制度、医療・介護、障害者支援など10章にわたる具体的政策対応を詳述しています。
若者の社会保障・労働施策への意識
2025年1月に実施された高校生3,000人へのアンケート調査では、労働分野(労働時間・賃金のきまり)への関心が8割前後と最も高く、医療・年金が6割前後、介護・福祉・公衆衛生が5割弱となっています。理解度はいずれの分野も5~6割にとどまっており、社会保障教育・労働法教育の経験がある場合は関心度・理解度ともに向上する傾向が明確に示されています。
社会保障制度の基本的枠組み
制度の構造: 「自助」「共助」「公助」の適切な組み合わせで形成され、主要な制度として①社会保険(年金・医療・介護・雇用・労災)、②社会福祉、③公的扶助、④保健医療・公衆衛生の4分野があります。社会保障は3つの機能を持ち、生活安定・向上機能(病気・失業等のリスク対応)、所得再分配機能(格差縮小・低所得者支援)、経済安定機能(消費・投資の安定化)により社会全体を支えています。
人口減少・超高齢社会の現状
日本の人口は2008年をピークに減少し、2020年の約1億2,615万人から2050年には1億469万人まで減少する見込みです。2024年の出生数は686,061人(過去最少)、合計特殊出生率は1.15(過去最低)となっています。晩婚化も進行し、平均初婚年齢は男性31.1歳・女性29.7歳、第1子出産時平均年齢は母親31.0歳・父親33.0歳となっています。50歳時未婚率は男性28.25%・女性17.81%に達し、非正規雇用者の配偶者のいる割合は正規雇用者より低く、雇用・所得の不安定さが結婚のハードルとなっている現状があります。
全世代型社会保障の方向性
人口減少・超高齢社会に対応するため、①「少子化・人口減少」の流れを変える取組み、②「超高齢社会」に備える制度整備、③「地域の支え合い」を強める仕組みづくりを3つの柱として推進しています。高齢者の就業率向上や働き方の多様化により、生産年齢人口減少を補完する取組みが進められており、日本の平均寿命・健康寿命は先進7カ国中最長を維持しています。
労働施策の展開
労働施策は産業化に伴う労働問題への対応から始まり、経済・社会変化に応じて発展してきました。現在は「誰もが生きがいを持って能力を発揮できる社会」「多様な働き方を可能とし、自分の未来を自ら創ることができる社会」の実現を目指し、働く環境整備、公正な待遇確保、多様な人材活躍促進、仕事と生活の両立支援、能力向上支援、転職・再就職支援、労働保険制度の充実を柱として展開されています。
記事は、若者が社会保障・労働施策を知ることで生活上の困りごとの相談・解決ができるようになり、将来の自分を主体的に選択できる力を身につけ、より良い社会づくりに参画できるようになると結論づけています。