日本の資金循環に関する研究 ～財務総研の研究・交流活動紹介～

財務総合政策研究所が2023年から2025年にかけて開催した「日本経済と資金循環の構造変化に関する研究会」及び「日本企業の成長と内外の資金フローに関する研究会」の成果を紹介する報告書です。本研究では、家計・企業・海外・政府間の資金循環の特徴を明らかにし、特に「資金余剰主体としての日本企業」に焦点を当てて分析しています。日本の資金循環は、1990年代初頭のバブル崩壊以降、政府が資金余剰から資金不足に、企業が資金不足から資金余剰に転換し、家計・企業の資金余剰と海外・政府の資金不足がバランスする構図が続いています。この構造は他国に類例のない日本経済の顕著な特徴となっています。研究会では、家計の金融資産（過去最高を更新）、企業の内部留保、日本の対外純資産、政府の国債発行残高などのストック統計を、資金循環という観点から統合的に分析しています。各部門の貯蓄と投資の規模、資金需給に影響を及ぼす要因を整理し、日本経済の安定的な成長に向けた望ましい資金循環のあり方について、大学研究者やメガバンク・地方銀行の実務家も交えて議論を重ねました。世界経済の成長を日本企業全体の安定的な成長に結びつける上で望ましい企業活動や国内外の資金フローについて、具体的な政策提言も含めて考察を深めています。