調査目的と背景 経済産業省が宇宙産業を新たな成長分野として位置づけ、官民連携による産業振興策の効果的な推進モデルを構築するために実施した戦略調査の報告書です。宇宙利用サービス、衛星製造、ロケット開発等の分野における官民の役割分担と連携方式を分析し、日本の宇宙産業の国際競争力強化に向けた政策提言を行っています。
宇宙産業の市場動向 世界の宇宙産業市場は前年比12.4％増の4,690億ドルに達し、日本の市場規模は3.9兆円（世界シェア7.2％）となっています。特に衛星データ利用サービス市場が急成長しており、前年比34.7％増の8,200億円を記録しました。小型衛星コンステレーション事業への民間投資も活発化し、年間投資額は1,850億円に達しています。一方、基幹ロケット分野では米SpaceX、欧Arianespace等との競争が激化し、日本企業の受注シェは5.8％に留まっています。
官民連携の進展状況 宇宙産業振興における官民連携プロジェクトは累計127件、総事業費2.8兆円の規模となっています。特に衛星データ活用では、農業・災害監視分野で89.4％の企業が民間投資を拡大し、ROIは平均156.3％を達成しています。また、宇宙ベンチャー企業への政府系ファンド投資が年間420億円に達し、新規参入企業数は前年比45.2％増の168社となりました。技術開発では、官民共同研究により開発期間が平均32.1％短縮され、コスト削減効果は28.7％となっています。
政策提言と支援体制 宇宙産業の戦略的育成に向けて、10年間で総額2兆円規模の「宇宙産業発展基金」の創設を提案しています。基幹技術開発に8,000億円、商業化支援に7,000億円、国際展開促進に3,000億円、人材育成に2,000億円を配分する計画です。また、2030年までに宇宙産業市場規模を現在の3.9兆円から8兆円に倍増させ、宇宙関連ベンチャー企業数を500社以上に拡大することを目標としています。さらに、アジア太平洋宇宙協力機構（APSCO）等との連携強化により、日本の宇宙技術の国際標準化を推進するとしています。