総務省は放送・配信コンテンツ産業戦略検討チーム第7回会議を開催し、デジタル時代における放送制度の在り方と日本のメディアコンテンツ産業の国際競争力強化を図る包括的な戦略検討を本格化させています。この会議では「取りまとめ(案)」に対する意見募集結果の検証と意見交換を通じて、OTT(Over The Top)サービスの拡大、5G・6G技術の進展、グローバルな動画配信プラットフォームの台頭等に対応した新たなメディア産業政策の策定を進めています。
今回の検討では、放送事業者とインターネット配信事業者の融合・競争環境の整備、視聴者・消費者利益の保護、コンテンツの多様性確保、地域情報発信機能の維持・強化が主要テーマとして位置づけられています。特に注目すべきは、Netflix、Amazon Prime Video、Disney+等の海外プラットフォームが日本市場で急速に拡大する中で、日本発のコンテンツ創出・配信基盤をいかに強化するかという戦略的課題です。
経済的観点では、日本のメディアコンテンツ市場規模(約13兆円)の更なる拡大と、韓国コンテンツの国際的成功に対抗する「クールジャパン」戦略の実効性向上が重要政策目標となっています。具体的には、アニメ、ドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー等の日本独自コンテンツの海外展開支援、コンテンツ制作投資の拡大、デジタル配信技術の高度化等を通じた産業競争力強化が検討されています。
技術革新の側面では、8K・4K超高精細映像技術、VR・AR技術、AI活用のコンテンツ制作、ライブ配信技術の高度化等により、視聴者体験の革新的向上と新たな収益モデル創出を目指しています。また、著作権保護とフェアユース拡大の両立、個人情報保護とパーソナライゼーション技術の調和、青少年保護と表現の自由のバランス等、デジタル時代特有の法制度課題への対応も重要な検討項目となっています。
地域メディアの持続可能性確保も重要課題として位置づけられており、ローカル放送局の経営安定化、地域密着型コンテンツの制作支援、災害時情報伝達機能の維持・強化等を通じて、メディアの地域性と多様性を保持する政策展開が図られています。国際協力の観点では、アジア太平洋地域でのコンテンツ流通促進、デジタル技術標準の国際協調、海賊版対策の多国間連携等により、日本のメディア産業の国際的地位向上を目指しています。
規制緩和と消費者保護の両立、イノベーション促進と既存産業保護のバランス、グローバル競争と国内産業育成の調和等、複合的な政策課題に対する総合的アプローチが求められており、この戦略検討は日本のメディア・エンターテイメント産業の将来を左右する極めて重要な政策プロセスとして注目されています。