米国税関・国境警備局(CBP)が輸入企業に対する税関保証金(Custom Bond)の引き上げ要求を増加させている状況について、JETROニューヨーク事務所が2025年9月3日に報告しました。
保証金引き上げの背景
国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税や1962年通商拡大法232条に基づく関税などの発動により、輸入関税率が大幅に引き上げられています。これにより輸入者の支払い関税額が急増し、CBPが既存の保証額では関税未払いリスクをカバーできないと判断しているため、保証金の引き上げ要求が増加しています。
特に232条関税対象品目(鉄鋼・アルミニウム、同派生品、自動車部品など)の輸入企業や、中国をはじめとする高関税率適用国からの輸入に対して、保証金の積み増しを求めるケースが増えています。
税関保証制度の概要
税関保証(Custom Bond)は、輸入者が関税やペナルティーを支払えない事態に備えた保証制度です。インボイス価格が2,500ドル以上の貨物を輸入する場合、輸入者はCBP認定の保証会社と契約を結び、必要な保証金を預ける必要があります。
保証には、1回限りのSingle Bondと、1年間何度でも使用可能なContinuous Bond(更新可)の2種類があります。CBPはContinuous Bondの適正額について、年間の関税・手数料支払い総額の10%または5万ドルのいずれか大きい方を最低ラインとする基準を設けています。
企業への影響
在米日系企業からは深刻な影響が報告されています。日系通関業者によると「追加関税発動以降、特に中国発貨物を扱う荷主でボンド不足が生じている」との声があります。ケンタッキー州の日系自動車部品会社は「一部輸入品に50%の鉄鋼・アルミ関税が賦課され、税関保証金を現状の5倍近くに引き上げるようCBPから通知を受けた」と報告しています。
全米通関業者・フォワーダー協会(NCBFAA)は、輸入業者の関税債務増加に伴い、財務諸表の提出要求や高額な保証金・担保要求のリスクを指摘しています。また、CBPからの情報提供要請書(Form28)や措置通知書(Form29)の発行増加により、通関業務の遅延も懸念されています。
企業に求められる対応
保証金の支払い義務は通関書類上の輸入者が負いますが、実務では通関業者が保証会社とのやり取りを代行することが多く、最終ユーザー企業が保証金引き上げの必要性を認識していないケースも見られます。
保証金不足による通関差し止めや保証会社による引き受け拒否を避けるため、企業には以下の対応が求められています:
- 現状の保証金額と必要額の把握
- 通関業者・保証会社との早期協議
- 財務関連情報の準備
- リスク対策の検討と実施
米国の関税政策が流動的な中、輸入企業は税関保証金の管理を含む包括的なリスク管理体制の構築が急務となっています。