神戸市のシンガポールにおける新海外拠点設置とその戦略的意義について解説したものです。
新拠点開設の概要
神戸市は8月27日、新たな海外拠点として「神戸シンガポールビジネスオフィス」を開設しました。同オフィスはシンガポール国立大学の1つである南洋理工大学(NTU)傘下の技術移転・創業支援機関「NTUitive」が運営するインキュベーション施設内に設置されています。
立地の特徴: この施設は、政府系の産業インフラ開発機関JTCコーポレーションが所管するスタートアップ集積エリア「JTCローンチパッド@ワンノース」に位置し、革新的なエコシステムの中心地にあります。NTUitiveの担当者によると、日本の自治体がこの施設内に拠点を設けるのは初めてのケースとなります。
拠点の機能と運営体制
主要業務: 同オフィスでは以下の業務を実施します:
- 市内企業支援の企画・実行
- 国内外の支援機関との連携
- 現地情報の収集
- 神戸市職員1人が常駐して運営
戦略的選択の理由
東南アジア戦略: 神戸市担当者によると、「東南アジアでの拠点設立を検討する中で、スタートアップとの共創やイノベーション拠点としてのシンガポールの優位性に着目した」とのことです。
産業特性の適合: 特に神戸市の強みであるものづくりや医療産業分野との親和性を踏まえ、世界有数の理工系大学であるNTUが運営するインキュベーション施設を選定したと説明されています。
広域展開計画と将来構想
カバー地域の拡大: シンガポールオフィスは東南アジアにとどまらず、インドや中東地域もカバーする予定です。これにより、神戸市の影響力を幅広いアジア・中東圏に拡大する戦略となります。
連携体制構築: 今後はジェトロなどの関係機関と連携し、シンガポールや周辺地域からの企業誘致や、市内企業の海外展開を日本国内外から支援できる体制を構築していく方針です。
交流基盤の強化
神戸空港の国際化: 2025年4月から神戸空港での国際チャーター便の運航が可能となり、2030年前後には国際定期便の運航を目指すなど、海外との交流基盤の強化を並行して進めています。これにより、物理的なアクセスの向上とビジネス拠点機能の相乗効果を図る総合的な国際化戦略となります。
記事は、地方自治体による戦略的海外展開の新モデルとして、イノベーション・エコシステムとの連携を重視した拠点設置が、企業誘致と地域企業支援の両面で効果的なアプローチであることを示しています。