認定エンドユーザー制度からの除名措置
米国商務省産業安全保障局(BIS)は2025年8月29日、インテル、サムスン電子、SKハイニックスの中国拠点向けの半導体製造装置・関連技術の輸出管理を強化する最終規則を発表した。12月31日付で米国の輸出管理規則(EAR)における「認定エンドユーザー(VEU)」のリストから3社の中国拠点を削除する。
対象となる3社の中国拠点:
- Intel Semiconductor(Dalian)
- Samsung China Semiconductor
- SK hynix Semiconductor(China)
VEU制度の概要と影響
VEU制度の仕組み: 商務省が米国の国家安全保障上の利益を阻害する恐れがないと認定した外国のエンドユーザーで、2025年8月現在、米国企業や韓国企業の中国国内の7拠点、米国企業のインド国内の1拠点が認定されている。VEUに対しては、個別に輸出許可(ライセンス)を取得することなく、特定の品目を輸出や再輸出などすることができる。
今回の変更による実務的影響: 3社の中国拠点向けの輸出などに際しては、今後個別にライセンスを申請・取得する必要が生じる。BISは審査方針として、これら拠点の既存施設の運営維持に必要な申請を承認する一方、生産能力拡大や技術水準向上につながる申請は承認しない考えを示した。
トランプ政権の政策姿勢
BISは今回の発表で、VEU制度について「バイデン前政権下の(輸出管理の)抜け穴」と問題視した。ジェフリー・ケスラー商務次官(産業安全保障担当)は「トランプ政権は輸出管理の抜け穴、特に米国企業の競争力を損なうものに対処することを約束している。本日の決定はこの約束を果たすための重要な一歩だ」と述べた。
シリア向け輸出管理の緩和措置
緩和の背景: BISは8月28日、シリア向けの輸出管理を一部緩和する最終規則を発表した。この措置は、ドナルド・トランプ大統領が2025年6月に発表したシリア制裁解除に関する大統領令に基づく。
具体的な緩和内容:
- 従来、規制品目リスト(CCL)に含まれないEAR99に分類される品目であっても、シリア向けの輸出などに際してはライセンス申請が義務付けられていたが、これを撤廃する例外規定を新設
- 民生用通信機器などの特定品目の輸出などに、個別のライセンス取得を不要とする例外規定の適用範囲をシリアに拡大
なお、3社以外でVEUに認定されている米国企業の中国拠点やインド拠点に対するVEU制度は維持されている。