総務省が開催した「持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会」の第8回会合(最終回)に関する報告です。
研究会の背景と目的
持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会は、人口減少や高齢化が進む中で、地方自治体が持続的に行政サービスを提供していくための方策を検討するために設置されました。2024年11月に開始された本研究会は、約7か月にわたって8回の会合を重ね、2025年6月16日に最終回を迎えました。会合では、大都市における行政課題、AIの活用、デジタル技術を活用した住民基本台帳事務の効率化など、3つのワーキンググループを設置して専門的な検討も行われました。
報告書案の構成と主要論点
第8回会合では、これまでの議論を集約した報告書案が事務局から提出されました。報告書案は、地方行財政の現状と課題、将来に向けた基本的な考え方、具体的な改革の方向性という3部構成となっています。主要な論点として、人口減少下での行政サービスの維持・向上、デジタル技術の積極的活用、広域連携の推進、職員の専門性向上と人材確保などが挙げられました。特に、AI技術の活用については、単なる業務効率化にとどまらず、住民サービスの質的向上につなげることの重要性が強調されました。
ワーキンググループからの報告内容
3つのワーキンググループからは、それぞれの検討成果が報告されました。大都市における行政課題への対応に関するワーキンググループは、東京・大阪などの大都市特有の課題として、人口集中による行政需要の増大、インフラの老朽化、防災対策の複雑化などを指摘し、広域連携の強化と財源確保の必要性を提言しました。自治体におけるAIの利用に関するワーキンググループは、5つの自治体での実証実験結果を踏まえ、AIを活用した窓口業務の効率化や政策立案支援の可能性を示しました。デジタル技術を活用した住民基本台帳事務等のあり方に関するワーキンググループは、マイナンバーカードの普及率が80%を超えた現状を踏まえ、オンライン手続きの拡充と業務プロセスの抜本的見直しを提案しました。
今後の実施に向けた課題
報告書案では、提言の実現に向けた課題も整理されました。第一に、法制度の見直しが必要な事項については、地方自治法の改正を含む制度改革が求められます。第二に、デジタル化の推進にあたっては、小規模自治体への支援強化と、セキュリティ対策の徹底が不可欠です。第三に、職員の意識改革と能力開発が重要であり、研修制度の充実と人事交流の促進が提案されました。第四に、住民の理解と協力を得るための丁寧な説明と、成果の可視化が必要とされています。
最終とりまとめと今後の展開
委員からは報告書案に対して概ね賛同が得られ、一部文言の修正を経て最終報告書として取りまとめられることになりました。会合では、本研究会の成果が単なる提言にとどまることなく、実際の政策に反映されることへの期待が表明されました。総務省は、本報告書を踏まえて、2025年度中に具体的な施策の検討を進め、必要な法改正については2026年の通常国会への法案提出を目指すとしています。
研究会の締めくくりにあたり、座長からは「地方行財政の持続可能性確保は待ったなしの課題であり、本報告書がその解決に向けた重要な一歩となることを期待する」との総括がなされました。