経済産業省が開催した「第2回GXリーグにおけるサプライチェーンでの取組のあり方に関する研究会」に関する報告です。
研究会の背景と目的
GXリーグは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、経済と環境の好循環を作り出す企業群が集まる場として2023年に本格稼働しました。参加企業は自社の排出削減だけでなく、サプライチェーン全体での脱炭素化が求められています。本研究会は、2025年7月15日に開催され、GXリーグ参加企業がサプライチェーンにおいてどのような取組を進めるべきか、その具体的な方策と課題について検討しました。
サプライチェーン脱炭素化の現状と課題
事務局資料では、サプライチェーンにおける脱炭素化の取組状況と直面する課題が整理されました。多くの企業において、自社の直接排出（Scope1）や購入電力由来の排出（Scope2）の削減は進展しているものの、サプライチェーン上の排出（Scope3）の把握と削減には大きな課題があることが明らかになりました。特に、中小企業を含むサプライヤーからの排出量データ収集の困難さ、データの信頼性・比較可能性の確保、削減コストの負担配分などが主要な課題として挙げられました。
委員企業による先進事例の共有
勝田委員、斯波委員、山本委員から、それぞれの企業におけるサプライチェーン脱炭素化の取組事例が紹介されました。勝田委員からは、サプライヤーエンゲージメントプログラムを通じて、主要サプライヤーの排出量削減目標設定を支援し、協働で削減活動を推進している事例が報告されました。斯波委員は、デジタル技術を活用したサプライチェーン全体の排出量可視化システムの構築と、それに基づく削減施策の展開について説明しました。山本委員からは、業界横断的なプラットフォームを通じた排出量データの標準化と共有の取組が紹介されました。
データ収集・管理の標準化に向けた議論
研究会では、サプライチェーン全体での排出量データの収集・管理方法の標準化が重要な論点となりました。現状では、企業ごとに異なる算定方法やデータフォーマットが使用されており、サプライヤーの負担が大きいことが指摘されました。これに対し、業界共通のデータプラットフォームの構築、国際的な算定基準との整合性確保、中小企業でも対応可能な簡易な算定ツールの開発などが提案されました。また、データの信頼性を担保するための第三者検証の仕組みについても議論されました。
支援策と今後の方向性
サプライチェーン脱炭素化を推進するための支援策として、以下の方向性が示されました。第一に、中小企業向けの排出量算定・削減支援ツールの開発と普及です。第二に、サプライヤーの削減努力を適切に評価し、インセンティブを付与する仕組みの構築です。第三に、業界別・地域別の協働プラットフォームの形成による、知見・ノウハウの共有促進です。第四に、金融機関と連携したサステナブルファイナンスの活用による、サプライチェーン全体での脱炭素投資の促進です。
研究会では、GXリーグ参加企業が率先してサプライチェーン脱炭素化を推進することで、日本産業全体の競争力強化と脱炭素化の両立を実現できるとの認識が共有されました。今後、本研究会での議論を踏まえ、具体的なガイドラインや支援施策の検討が進められる予定です。