経済産業省の野原商務情報政策局長は2025年8月26日、カナダ天然資源省のイザベラ・チャン上級次官補と会談し、2023年9月に両国間で署名された蓄電池サプライチェーンに関する協力覚書に基づく第二回局長級対話を実施しました。この対話は、カーボンニュートラルと経済安全保障の両立を目指す持続可能で信頼性のあるグローバル蓄電池サプライチェーン構築における日加戦略的協力の重要な節目となるものです。
【協力覚書の背景と戦略的意義】 2023年9月21日に署名された協力覚書は、日本国政府(経済産業省、外務省)とカナダ政府(産業省、天然資源省、外務貿易開発省)の間で締結され、カーボンニュートラル及び経済安全保障の観点を踏まえた持続可能で信頼性のある蓄電池サプライチェーン構築を目的としています。この枠組みは、中国依存度の高い蓄電池・電池材料サプライチェーンの多様化と強靱化において、民主主義価値を共有する同盟国・パートナー国との協力深化の重要性を反映しています。
【第二回局長級対話の具体的成果】 野原局長とチャン上級次官補は、第一回局長級対話以降に両国で進めてきた具体的アクションの進捗を、両国関連企業からの説明も踏まえて確認しました。今後の協力強化分野として以下3つの柱で更なるアクションを進めることで一致しました:
- 政策情報の交換: 蓄電池・電池材料に関する規制動向、支援政策、技術標準等の情報共有強化
- 貿易・投資促進策: 両国企業間の商取引拡大、投資機会創出、規制障壁の軽減等
- 研究開発: 次世代蓄電池技術、リサイクル技術、材料技術等の共同研究推進
【研究開発協力の制度化と具体化】 両政府は、科学・技術・イノベーションが持続可能性と産業競争力において基本的役割を果たすことを認識し、蓄電池サプライチェーンに関する相互有益で連携した研究開発を深化させることで合意しました。具体的な推進体制として、日本側は国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)、カナダ側は国立研究機構(NRC)が参加し、両国の産業界及びエコシステム関係者との連携を強化します。
【2026年共同ワークショップの設定】 次のステップとして、産業技術総合研究所及び国立研究開発機構が共催する2026年の共同ワークショップ開催について本日の対話で合意されました。このワークショップは情報交換と共同研究プロジェクトの促進を目的とし、両国の研究機関、産業界、政策担当者が一堂に会する重要なプラットフォームとなることが期待されます。
【経済安全保障と産業政策の統合】 この協力は、近年高まっている経済安全保障リスクへの対応策として重要な意味を持ちます。蓄電池は電気自動車、再生可能エネルギー貯蔵、グリッドストレージ等の脱炭素技術の中核部品であり、そのサプライチェーンの安定確保は国家安全保障に直結する戦略物資となっています。特に、リチウム、コバルト、ニッケル、グラファイトなどの重要鉱物の供給源多様化と、精製・加工段階での対中依存度軽減が喫緊の課題となっています。
【日加協力の相互補完性】 カナダは豊富なリチウム、ニッケル、コバルト等の鉱物資源を有し、クリーンエネルギー政策とESG投資の拡大により鉱業セクターの持続可能性向上を進めています。一方、日本は蓄電池・電池材料の先進技術、精密製造技術、品質管理システムで優位性を持ちます。この相互補完的な協力により、川上(鉱物採掘・精製)から川下(電池製造・リサイクル)まで統合されたサプライチェーンの構築が可能になります。
【国際的な枠組みとの整合性】 この日加協力は、米国主導のCHIPS法、インフレ削減法(IRA)との整合性を保ちながら、G7、QUAD、IPEF、クリーン エネルギー移行パートナーシップなどの多国間枠組みとの連携も視野に入れています。また、EU の重要原材料法(CRM法)や豪州の重要鉱物戦略とも協調し、民主主義諸国による戦略的自律性の確保を目指します。
【産業界への波及効果】 この政府間協力により、日本の蓄電池関連企業(パナソニック、CATL日本法人、村田製作所、日立造船等)とカナダの鉱業・電池関連企業との商取引機会拡大が期待されます。また、両国のスタートアップ・中小企業にとっても新たなビジネス機会創出と技術革新の促進効果が見込まれます。
【長期的な戦略目標】 この協力は、2030年代に予想される世界的な蓄電池需要急拡大(年率20%以上の成長予測)に対応し、日本とカナダが蓄電池サプライチェーンの重要なハブとしての地位を確立することを目標としています。持続可能性、信頼性、競争力を兼ね備えたサプライチェーンの実現により、両国の経済成長とエネルギー安全保障の同時達成を目指します。