全国「ラーメン店」市場動向調査(2024年度)要約
1. 報告書の概要
本報告書は、株式会社帝国データバンクが2025年7月1日に公表した「全国『ラーメン店』市場動向調査(2024年度)」である。全国のチェーン店、ご当地ラーメン店、ラーメンを中心とした中華料理店を含むラーメン事業を展開する企業を対象に、市場規模、店舗数の推移、業績動向、倒産状況などを包括的に調査・分析している。調査データは2025年6月時点の帝国データバンクが保有する企業概要ファイル(COSMOS2、約149万社収録)および企業信用調査報告書(CCR、約200万社収録)、外部情報に基づいており、一部推定・予想値を含んでいる。
2. 主要なポイント
2024年度のラーメン店市場は7,900億円に達し、10年前の1.6倍という大幅な拡大を記録した。これは集計可能な2010年度以降で過去最高の市場規模である。上位50社の店舗数は約6,200店舗となり、初めて6,000店を超えた。市場拡大の主要因は、「家系ラーメン」や「濃厚豚骨ラーメン」などのチェーン店による積極的な新規出店である。増収企業は44.7%、増益企業は55.0%に達し、特に増益企業の割合は2010年度以降で最高を記録した。一方で、倒産件数は62件と前年度の72件から減少し、3年ぶりの減少となった。
3. 市場規模の推移と成長要因
ラーメン店市場は2014年度の5,066億円から2024年度の7,900億円へと56%もの成長を遂げた。この急成長の背景には複数の要因がある。第一に、日本式ラーメンの国際的な認知度向上により、韓国、台湾、香港などアジア圏からの観光客による需要が大幅に増加した。第二に、大手チェーン店が積極的な新規出店戦略を展開し、5年間で5割増の店舗数を達成した企業も現れた。第三に、コロナ禍からの回復局面において、外食需要の回復とともにラーメン店への客足が戻ってきた。これらの要因が相まって、市場全体の大幅な拡大につながった。
4. 業態別・地域別の分析
業態別では、特に「家系ラーメン」と「濃厚豚骨ラーメン」のチェーン店が顕著な成長を示した。これらの業態は、独自の味わいと高い再現性により、全国展開を加速させている。上位50社の主要チェーン店は、10年前の5,043店から2024年度末には約6,200店へと約1,200店増加した。地域別では、都市部を中心に店舗数が増加しているほか、観光地や交通の要所での出店も活発化している。特に訪日観光客の多い地域では、日本式ラーメンへの需要が高く、それに応じた出店戦略が展開されている。
5. 競争環境と市場構造
ラーメン店市場の競争環境は激化している。市場全体に占める上位3社の事業者売上高比率は約25%(2023年度時点)と比較的低く、市場の集中度は高くない。これはシェア拡大の余地が大きいことを示している。近年の特徴として、ラーメン事業以外の外食チェーンがラーメン事業に新規参入するケースが増加している。既存のラーメンチェーンは国内外での出店攻勢を強める一方、麺業態以外の外食大手も市場参入により事業拡大を図っている。この結果、市場全体の競争はより一層激しくなっている。
6. 価格動向と収益性分析
ラーメン店の経営環境は、原材料価格の高騰により厳しさを増している。帝国データバンクが算出した「ラーメン原価指数(豚骨ベース、東京都区部)」によると、2020年度平均を100とした場合、2024年度平均は129となり、5年間で約3割上昇した。豚肉、背脂、麺、海苔、メンマなど、スープから具材に至る幅広い原材料で価格が大幅に上昇した。また、人件費や光熱費の上昇も経営を圧迫している。しかし、「ラーメン1杯=千円の壁」という価格抵抗線があり、大幅な値上げは困難な状況が続いている。そのため、千円を超える期間限定メニューの開発やセットメニューの拡充により客単価向上を図る戦略が広がっている。
7. 新規参入と倒産の動向
2024年度のラーメン店倒産件数は62件で、過去最多だった前年度の72件から減少した。2025年度は5月までに12件発生しているが、総じて淘汰は落ち着いた水準で推移している。倒産企業の多くは中小・個人店で、原材料費や人件費の上昇に対する価格転嫁が追い付かず経営に行き詰まるケースが目立った。一方、新規参入では、既存の外食チェーンがラーメン事業に参入する動きが活発化している。これらの企業は、既存の店舗運営ノウハウや資金力を活かして市場参入を図っており、市場の競争構造に変化をもたらしている。
8. 消費者トレンドの変化
消費者のラーメンに対する嗜好や行動パターンに大きな変化が見られる。第一に、訪日観光客、特にアジア圏からの観光客による需要が急増し、日本式ラーメンは重要な観光コンテンツとなっている。第二に、高価格帯商品への受容性が高まり、千円を超える期間限定メニューやプレミアムラーメンへの需要が増加している。第三に、セットメニューや追加トッピングなど、カスタマイズへの需要が高まっている。これらの変化により、ラーメン店は単なる食事提供の場から、体験価値を提供する場へと進化している。消費者は味だけでなく、店舗の雰囲気やサービス、独自性も重視するようになっている。
9. 今後の課題と機会
ラーメン店業界は複数の課題と機会に直面している。課題としては、原材料価格の高止まり、人手不足による人件費上昇、エネルギーコストの増大などが挙げられる。特に中小・個人店では、スケールメリットを活かせないため、これらのコスト上昇への対応が困難である。一方、機会としては、訪日観光客の増加による需要拡大、海外展開の可能性、新業態開発による差別化などがある。大手チェーンと中小・個人店の間で収益力の二極化が進行しており、効率的なオペレーションと原価管理の重要性が高まっている。また、デジタル技術の活用による業務効率化や顧客体験の向上も重要な課題となっている。
10. 結論と今後の展望
2024年度のラーメン店市場は7,900億円という過去最高の規模に達し、今後も成長が見込まれる有望な市場である。大手チェーンによる積極的な出店戦略、訪日観光客需要の拡大、新規参入企業の増加などが成長を牽引している。一方で、原材料価格の高騰や人件費上昇などのコスト増加要因により、特に中小・個人店の経営環境は厳しさを増している。今後は、効率的な店舗運営、差別化された商品開発、デジタル技術の活用などが競争力の源泉となる。市場の集中度が比較的低いことから、M&Aや業界再編の可能性も高く、2025年度以降も市場構造の変化が予想される。ラーメン店市場は、日本の食文化を代表する産業として、国内外で更なる成長が期待される。