経済産業省が「大学発ベンチャー表彰2025」の受賞者を発表し、古賀経済産業副大臣が経済産業大臣賞を「燈株式会社」に授与した。表彰式は2025年8月21日に開催され、同時発表として文部科学省、科学技術振興機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構が参加した。
表彰制度の概要と応募状況
「大学発ベンチャー表彰」は、大学等の研究開発成果を用いた起業および起業後の挑戦的な取り組みを促進することを目的として、優れた大学発ベンチャーを表彰する制度である。本年度は令和7年4月1日から5月12日まで募集を行い、41件の応募があった。外部有識者からなる選考委員会による書面および面接審査を経て、大学発ベンチャー6社とその支援大学等・支援企業の受賞が決定された。選考プロセスでは、技術革新性、市場展開力、社会貢献度、経営戦略の実効性などが総合的に評価された。
経済産業大臣賞受賞企業の詳細
経済産業大臣賞を受賞した「燈株式会社」は、東京大学大学院工学系研究科の松尾豊研究室発のスタートアップ企業で、製造・建設・物流業などの企業に対し、日本の現場業務や商習慣にマッチしたAIを中心とした最先端テクノロジーサービスを提供している。同社は、各企業の課題に沿ったDX推進を行う「DX Solution事業」と、業界固有のワークフローに最適化されたAIプロダクトを提供する「AI SaaS事業」の2つの事業を展開している。特に、従来のITソリューションでは対応困難だった日本固有の業務慣行や現場レベルの課題に対応できる技術開発力が評価された。
評価ポイントと社会的意義
燈株式会社の受賞理由として、人手不足や業務の属人化といった日本の産業界が抱える構造的課題に対応し、業界全体の効率化と働き方改革に貢献する現場密着型のプロダクト開発と実践的経営が高く評価された。同社のAI技術は、製造現場の熟練技能の継承、建設業界の安全管理システム、物流業界の最適化ソリューションなど、各業界の具体的課題解決に直結する実用的なアプローチを採用している。これにより、技術の社会実装という大学発ベンチャーの本質的役割を体現している点が特に注目された。
産学連携促進への政策的効果
今回の表彰は、大学の研究成果を実用的なビジネスソリューションに転換し、日本の産業競争力向上に貢献する企業を顕彰することで、産学連携による新技術の社会実装を推進する政府方針を示している。経済産業省、文部科学省、科学技術振興機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構の4機関による同時発表は、政府一体となった大学発ベンチャー育成支援の姿勢を明確にしており、今後の起業促進と研究開発投資の拡大が期待される。