シンガポールのローレンス・ウォン首相が8月17日に行った独立記念集会（ナショナルデー・ラリー）の演説について、米国関税措置への対応と新たな経済戦略を解説したものです。
米国関税への警戒感 ウォン首相は、米国がシンガポールに適用する基本関税10％について「どの国にも適用される最低水準レベルの税率だが、安心はできない」との認識を示しました。基本関税の引き上げや、医薬品や半導体などの特定品目に対する追加関税の可能性に言及し、楽観視できない状況であることを強調しています。
雇用重視の経済戦略 2025年の演説では、米国関税措置や人工知能（AI）普及などに対応した新たな経済戦略の立案が主要テーマとなりました。ウォン首相は「われわれの経済戦略の核心は、雇用、雇用、そして雇用（の確保）」と述べ、雇用支援策として40歳以上の中高齢労働者向けの「スキルズフューチャー・レベルアップ」プログラムを拡充しました。従来の公立教育機関でのフルタイム学習に加え、パートタイムでの就学や民間研修機関も一部対象とし、生活費支援を行います。
AI普及への対応と労使連携 AI技術の普及について、中小企業を含むすべての企業が効率的にAIを業務に取り入れ、競争力を高められるよう政府が支援すると表明しました。AI普及に伴う雇用の変化に対しては、政府が全国労働組合会議（NTUC）、労働者と政労使連携で雇用を再設計し、すべての労働者が能力を発揮できるよう支援する方針を示しています。
JS-SEZ開発によるウッドランド再開発 マレーシア南部のジョホール・シンガポール経済特別区（JS-SEZ）の開発により、対岸のシンガポール北部ウッドランドの再開発が加速する見通しです。両国間のアクセス向上のため、ウッドランドの入国管理施設規模を約5倍に拡張し、2026年末開通予定の高速輸送システム（RTS）のシンガポール側駅周辺には、JS-SEZの事業をサポートする工業区を開発します。また、近接するアドミラル・パークには約4,000戸の公共住宅（HDBフラット）を建設する予定です。
記事は、シンガポールが米国の通商政策変化に対して慎重な姿勢を維持しながら、雇用確保を最優先とした経済戦略とマレーシアとの連携強化により、変化する国際環境に対応していく方針を明確にしたと報告しています。