資金供与計画の概要 米国エネルギー省（DOE）は8月13日、重要鉱物・材料の国内供給網強化に向け、総額約10億ドル規模の資金供与機会通知（NOFO）を発表する意向を示した。この大規模投資は、鉱山から製造・リサイクルに至るサプライチェーン各段階での技術導入・商業化・拡大を促進することを目的としている。トランプ大統領の大統領令「米国のエネルギーを解き放つ」に基づく政策の一環として実施される。
5分野の支援プログラム 資金提供は5分野に分かれて実施される。第1は重要鉱物と材料の生産技術の高度化と商業化（約5,000万ドル上限）で、希土類磁石、半導体用ガリウム・ゲルマニウム・炭化ケイ素、リチウム等の生産技術開発を対象とする。第2は廃棄物・副産物からの重要鉱物の回収（約2億5,000万ドル）で、既存産業施設における有用鉱物を副産物として回収する技術向上を支援する。第3はレアアースの精錬・回収実証施設の整備（約1億3,500万ドル）で、鉱山尾鉱や有害物質、廃棄物からレアアースを抽出する技術の商業化を支援する。
電池関連と先端技術開発 第4は電池材料の処理・製造・リサイクル（約5億ドル上限）で、リチウム、グラファイト、ニッケル、銅、アルミニウム等の電池に利用される鉱物の処理、リサイクル実証施設や商用化施設を支援する。第5はエネルギー高等研究局（ARPA-E）による重要鉱物の回収技術開発（約4,000万ドル）で、産業排水から重要鉱物を回収する技術を促進する。第3、第4分野では資金受給者に50％超のコスト負担が義務付けられる。
戦略的意義と政策背景 米国は、レアアースや電池などで利用される多くの鉱物を、中国をはじめとした外国に依存している現状がある。今回の資金提供は、そうした現状からの脱却と国内での製造基盤の再構築を目的としている。DOEのクリス・ライト長官は「トランプ氏のリーダーシップにより、DOEは重要な材料の加工工程を国内に戻し、これら不可欠な資源の国内供給を拡大する上で主導的な役割を果たす」と述べ、エネルギー安全保障と経済安全保障の観点から国内供給強化の方針を強調している。