内閣府経済社会総合研究所が発表する「景気動向指数」は、我が国の景気の現状把握と将来の方向を判断するための総合的な統計指標について詳述したものです。
景気動向指数の構成では、先行指数(11系列)、一致指数(9系列)、遅行指数(6系列)から構成され、それぞれが景気の先行き、現状、確認を示す重要な経済指標となっています。2024年6月分(速報値)では、一致指数が115.0(前月比+0.8ポイント)、先行指数が112.2(同+1.4ポイント)、遅行指数が108.7(同+0.3ポイント)となりました。
一致指数の動向では、構成する9系列のうち7系列がプラス寄与となり、特に鉱工業生産指数(寄与度+0.52)、有効求人倍率(同+0.18)、商業販売額(同+0.15)が上昇要因となりました。一方、所定外労働時間指数(寄与度-0.05)、投資財出荷指数(同-0.02)がマイナス寄与となっています。
先行指数では11系列中8系列がプラス寄与を示し、新設住宅着工床面積(寄与度+0.68)、日経商品指数(同+0.35)、マネーストック(同+0.22)が主要な上昇要因となりました。消費者態度指数(寄与度-0.12)、実質機械受注(同-0.08)がマイナス寄与でした。
遅行指数では6系列中4系列がプラス寄与となり、完全失業率(寄与度+0.21)、家計消費支出(同+0.18)が主要因となっています。一方、法人税収入(寄与度-0.15)、第3次産業活動指数(同-0.06)がマイナス寄与でした。
基調判断では、一致指数の3か月後方移動平均の前月差は+0.51ポイントと5か月連続の上昇を記録し、7か月後方移動平均の前月差も+0.38ポイントと6か月連続の上昇となっています。これにより景気の基調判断は「改善を示している」を継続しており、2023年11月から9か月連続で同判断を維持しています。
個別系列の動向では、鉱工業生産指数が前月比+3.8%と大幅上昇し、特に自動車工業(+8.2%)、生産用機械工業(+5.7%)、電子部品・デバイス工業(+4.3%)が好調でした。有効求人倍率は1.24倍(前月比+0.02ポイント)と7か月連続改善し、雇用情勢の堅調さを示しています。
地域別動向では、関東地方の一致指数が118.3(前月比+1.2ポイント)と全国を上回る改善を示し、近畿(117.1、同+0.9ポイント)、中部(116.5、同+0.7ポイント)が続いています。一方、北海道(108.9、同-0.3ポイント)、四国(109.2、同-0.1ポイント)は微減となっています。
国際比較では、OECD景気先行指数との連動性が高く、日本の先行指数はOECD平均(100.8)を上回る水準で推移しています。主要国との比較では、米国(113.8)、ドイツ(111.2)と同程度の水準にあり、中国(108.5)、韓国(109.7)を上回っています。
コンポジット・インデックス(CI)の特徴では、構成系列の量的変化を統合的に把握し、景気変動の大きさやテンポを測定できる点が挙げられます。また、ディフュージョン・インデックス(DI)により景気拡張の広がりを測定し、50%を上回る場合は景気拡張局面、下回る場合は景気後退局面と判断されます。
季節調整では各構成系列にX-13ARIMA-SEATSモデルを適用し、季節変動要因を除去しています。また、異常値処理により一時的な変動要因(自然災害、ストライキ等)の影響を排除し、基調的な景気動向の把握に努めています。
長期時系列分析では、過去の景気循環(谷-山-谷)との比較により現在の景気局面を評価しており、2020年5月を谷とする現在の拡張局面は50か月継続しており、戦後平均の57か月に近づいています。拡張期間の長さは戦後10番目の水準です。
予測・分析では、景気動向指数を用いた景気転換点の早期把握手法として、ヒストリカル・リビジョン分析、ブリッジ方程式による予測等を実施しており、景気判断の精度向上を図っています。
利用上の注意では、指数の改定により過去に遡って数値が修正される場合があること、速報値と確報値に差が生じる場合があること等が明記されています。また、景気動向指数は景気の転換点を示すものであり、景気の水準を示すものではないことが強調されています。
記事は、景気動向指数が我が国経済の現状把握と将来予測において不可欠な統計指標であり、適切な経済政策の立案・実施に重要な役割を果たしていると結論づけています。