世界のGHG排出量過去最高を記録
欧州委員会の共同研究センター(JRC)は9月9日、世界の温室効果ガス(GHG)排出量が2024年に過去最高を記録した中、EUは削減傾向を主導したと発表した。2024年の世界のGHG排出量は二酸化炭素(CO2)換算で53.2ギガトン(土地利用・土地利用変化と林業を除く)となり、前年比1.3%増加した。
世界の排出量構造と傾向
1990年以降、年平均1.5%の割合で増加し、2024年の排出量は1990年比で65%の増加だった。主な要因は中国やインドなどの新興国での化石燃料由来のCO2排出の増加による。2024年のGHG排出量では、中国(29.2%)、米国(11.1%)、インド(8.2%)、EU(5.9%)、ロシア(4.8%)の5カ国・地域で世界の約6割近くを占めた。
EUの削減実績
排出量が1%以上を占める18カ国・地域の中で、排出量を前年比で削減したのはEU(1.8%減)、日本(2.8%減)、ドイツ(1.6%減)、韓国(0.3%減)だった。EU27カ国では、ドイツ(21.3%)、フランス(11.9%)、イタリア(11.7%)、ポーランド(11.0%)、スペイン(9.0%)の5カ国でEUの排出量の65%を占めた。
分野別削減状況と2030年目標
分野別では、運輸と建物を除いて前年比で減少し、1990年比では35%の削減となった。2030年までにGHG排出量を55%削減する目標までは、引き続き大幅な削減が必要だが、欧州委は各国から提出された国家エネルギー・気候計画(NECP)を分析した結果、同目標は達成の見込みとしている。
競争力と脱炭素の両立課題
ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の9月の一般教書演説では、欧州議会の複数会派が、米国との関税合意のうち2028年までに米国から天然ガスなどを総額7,500億ドル相当購入する費用は域内のクリーンへの移行や競争力強化に向けられるべきとの主張を展開した。各会派の意見が分かれている中、引き続き競争力強化と脱炭素の両立に向けた実行が注視される。