調査の目的と実施概要 本調査は、令和6年度経済産業省委託事業として、2050年カーボンニュートラル実現に向けた技術開発の現状と課題を分析し、戦略的な技術開発投資の方向性を提示することを目的として実施されました。水素・アンモニア、CCUS、次世代原子力等の重要技術分野について、国際競争力の観点から包括的な評価を行っています。
重要技術分野の開発状況 水素関連技術では、電解装置のエネルギー効率が前年度比8.3%向上し、製造コストも15.7%削減されました。CCUS技術では、実証プロジェクトが全国17箇所で進行中であり、CO2回収コストが目標値を12.4%下回る成果を達成しています。次世代原子力技術では、小型モジュール炉(SMR)の設計最適化により、建設コストを従来比25.8%削減する見通しが立ちました。
産業界の技術開発投資動向 製造業全体の脱炭素技術開発投資は前年度比34.2%増加し、総額1兆8,400億円に達しました。鉄鋼業では水素還元製鉄技術への投資が68.9%増加し、化学業界ではバイオマス由来原料への転換投資が52.1%増となっています。一方で、中小企業の技術開発投資は依然として低水準にとどまり、支援制度の拡充が課題となっています。
国際競争力と今後の戦略 主要技術分野における我が国の国際競争力評価では、水素技術で世界2位、CCUS技術で3位の地位を維持していますが、欧米や中国の追い上げが激しくなっています。競争力維持・強化に向けて、基礎研究から実用化まで一貫した支援体制の構築と、総額5,000億円規模の新たな技術開発基金創設が提言されています。また、国際技術標準の策定主導権確保と、友好国との技術協力枠組み強化が重要な戦略として位置づけられています。