経済産業省が開催した「第2回低濃度PCB含有電気工作物の適正な処分の推進に向けた検討会」に関する報告です。
検討会の背景と目的
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は優れた電気絶縁性を持つことから、かつて変圧器やコンデンサー等の電気機器に広く使用されていましたが、環境への残留性や生物への蓄積性が問題となり、1972年に製造・使用が禁止されました。しかし、微量のPCBを含有する電気工作物(低濃度PCB含有電気工作物)が現在も使用されており、これらの適正な処分が課題となっています。本検討会は、2025年3月3日に開催され、低濃度PCB含有電気工作物の処分推進に向けた具体的な方策を検討しました。
現状の課題と使用実態
検討会では、事務局から低濃度PCB含有電気工作物の適正な処分に向けた課題が提示されました。電気保安協会全国連絡会からは、自家用電気工作物における高圧機器の製造年別使用台数に関するデータが報告されました。この調査により、1990年以前に製造された機器の中に、依然として相当数の低濃度PCB含有の可能性がある電気工作物が使用されていることが明らかになりました。特に、中小規模の事業者において、PCB含有の有無の確認が進んでいない実態が浮き彫りになりました。
処分推進に向けた障壁
検討会では、低濃度PCB含有電気工作物の処分が進まない要因として、複数の障壁が指摘されました。第一に、PCB含有の判定には専門的な分析が必要であり、費用と時間がかかることです。第二に、処分費用が高額であることが、特に中小事業者にとって大きな負担となっています。第三に、処理施設の能力に限りがあり、計画的な処分体制の構築が必要です。第四に、事業者の認識不足により、そもそも所有機器にPCBが含まれている可能性を認識していないケースが多いことも課題として挙げられました。
具体的な対策の検討
これらの課題に対して、検討会では以下の対策が議論されました。まず、PCB含有の簡易判定方法の開発・普及により、事業者の負担を軽減することです。次に、処分費用の支援制度の拡充や、共同処理スキームの構築により、中小事業者の経済的負担を軽減する方策が検討されました。また、業界団体や電気保安関係者と連携した普及啓発活動の強化により、事業者の認識向上を図ることも重要とされました。さらに、処理施設の効率的な活用と、計画的な処分スケジュールの策定についても議論されました。
今後の方向性と取りまとめ
検討会の取りまとめでは、低濃度PCB含有電気工作物の処分を確実に進めるため、関係者が連携した総合的な取組みが必要であることが確認されました。具体的には、2027年3月末までの処理完了を目指し、段階的な処分計画を策定することが提言されました。また、電気主任技術者による定期点検時のPCB含有確認の徹底、処分に関する情報提供体制の整備、優良事例の横展開などが重要な施策として位置づけられました。
本検討会の議論は、PCB廃棄物の適正処理という環境保全上の重要な課題に対して、実効性のある解決策を提示するものとして、今後の政策展開に大きく寄与することが期待されています。