農林水産省の最新発表によると、2025年7月版の「スマート農業をめぐる情勢について」において、日本農業のデジタル変革の現状と展望が包括的に示された。スマート農業とは、ロボット技術やICT、AI、IoTなどの先端技術を活用して、超省力化や高品質生産を実現する新たな農業形態である。2025年10月に施行された「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」により、技術導入への支援体制が大幅に強化された。
現在の導入状況では、農業用ドローンによる農薬散布が急速に普及し、2024年度末時点で約15,000機が稼働している。自動走行トラクターや田植機、コンバインなどの導入も進み、大規模農家を中心に労働時間の30~50%削減を実現している事例が報告されている。また、施設園芸では環境制御システムやAIを活用した収量予測により、単位面積あたりの収量が従来比1.5倍に向上した事例もある。さらに、農業データ連携基盤(WAGRI)を通じたデータ共有により、気象・土壌・市況などの情報を統合的に活用する取り組みも広がっている。
今後の展開として、スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)が設立され、産学官連携による技術開発と社会実装の加速が図られる。また、農業支援サービス事業者の育成により、中小規模農家でも先端技術を活用できる環境整備が進められている。農林水産省は、2030年までに担い手のほぼすべてがデータを活用した農業を実践することを目標に掲げ、スマート農業の全国展開を推進していくとしている。