化学物質審査規制法（化審法）の平成29年改正の施行状況を評価し、今後の化学物質対策の方向性について検討した報告書です。
平成29年改正の主要な内容として、少量新規化学物質の特例制度における数量算定方法を見直し、環境への排出量を基準とする方式に変更しました。これにより、申出件数や国による数量調整件数が顕著に減少し、約80％の削減効果を達成しました。事業者にとっては予見可能性が向上し、制度の効率的な運用が実現されています。また、毒性が強い一般化学物質を「特定一般化学物質」として新たに位置づけ、事業者への指導・助言や情報提供の努力義務を導入しました。
報告書では、これらの改正措置が順調に実施されており、化学物質管理の適正化に大きく貢献していることを評価しています。一方で、今後の課題として、化学物質に関する情報をより安全な製品開発や資源循環に活用することの重要性を指摘しています。特に、SDGs（持続可能な開発目標）の達成に向けて、化学物質管理の更なる高度化が求められており、事業者へのインセンティブ付与や政策的支援のあり方について継続的な検討が必要とされています。
報告書は、現行制度の運用状況を引き続き注視しながら、2030年頃を目途に次なる制度見直しを検討することを提言しています。また、国際的な動向も踏まえつつ、日本の化学物質管理制度の更なる発展を目指すことが重要であると結論づけています。