IEA報告書の主要な発見
国際エネルギー機関（IEA）が9月12日に発表した「世界水素報告2025年版」によると、低排出水素製造プロジェクトの中止や遅延が相次いでいるにもかかわらず、2030年までの製造量は大幅な増加が見込まれる。ただし、プロジェクト発表が相次いだ2020年代前半ほどの急激なペースではないとの見方を示している。
2030年の製造量予測
大幅な製造量拡大: 2030年までに操業中、建設中、または最終投資決定に至るプロジェクトによる年間製造量は、2024年の約80万トンから5倍以上増加し、400万トンを超える見込み。
追加の潜在量: 需要を確保する効果的な政策が実施されれば、さらに年間600万トンが2030年までに操業開始する可能性が高いと予測している。
世界の水素需要と供給構造
2024年の世界水素需要は約1億トンに達し、前年比2％増加。しかし需要家は石油精製などの従来の産業部門が中心で、温室効果ガス回収措置を講じない化石燃料由来水素の利用が大半を占めている。
コスト構造の課題と変化
現在の価格差: 世界的に化石燃料から水素を製造する方が、再生可能エネルギーによる水の電気分解より安価。天然ガス価格下落と電解装置価格上昇によりこの差は拡大している。
将来の予測: 特に欧州では、再生可能エネルギーの急成長と新規制により、2030年までにコスト差は縮小する見通しとIEAは予測。
中国の主導的地位
中国は低排出水素製造のための電解装置導入を牽引し、設置済みまたは最終投資決定段階にある世界の電解装置容量の65％を占めている。ただし、輸送費や関税を考慮すると、中国国外での中国製電解装置設置は他社製と比べて著しくコスト優位性があるわけではないとしている。
情報ツールの充実
報告書と同時に「水素製造・インフラプロジェクトデータベース」最新版と「水素トラッカー」を新規公開し、日本企業の水素関連情報収集に活用できる利便性の高いツールが拡充された。