労働政策研究・研修機構(JILPT)が国際労働機関(ILO)の2025年5月発表の研究ブリーフ「AI and jobs: A 2025 update」に基づき、生成AIが世界の雇用に与える影響について分析したものです。
主要なポイント
1. 包括的な職業別AI影響評価手法
- 国際標準職業分類(ISCO-08)に基づく436職業とポーランド政府職業分類の29,753タスクを分析対象
- 各タスクのAI自動化可能性を0~1の範囲でスコア化し、職業レベルでの影響を段階1~4と「わずかな影響」「影響なし」の6段階で分類
- 人間とAIの組み合わせによる評価手法で、専門家検証とAI学習による包括的スコア算出を実施
2. 事務職への集中的影響と現実的評価への修正
- 最も自動化可能性が高い段階4職業の多くは事務職(データ入力、会計・経理、統計・財務担当事務員等)
- 2023年推計と比較して全体平均スコアは0.30から0.29に低下し、分散も小さくなり現実的評価に修正
- 議事録作成やアポイント調整等のタスクで2023年の0.9から2025年は最高0.76に低下
- 理論的可能性から実際の利用経験に基づく評価への転換で、人間の関与の不可欠性を確認
3. 世界雇用の24%が生成AI影響下に
- 生成AI影響を受ける112職業(段階1~4)の世界雇用に占める割合は24%
- 男女格差が存在し、男性21%に対し女性28%と女性の方が高い影響率
- 女性が多く就業する事務職の自動化リスクが高いことが主因
- 段階3・4では男性3.1%・2.4%に対し女性5.7%・4.7%と顕著な格差
4. 所得水準別・地域別格差の顕在化
- 低所得国では影響を受ける雇用が11%にとどまる一方、高所得国では34%に達する
- 事務・財務・顧客サービス等の生成AI影響大職業が高所得国に集中していることが要因
- 技術インフラや導入コストの制約により、実際の完全代替可能性は限定的
- 地域間でのデジタル格差が雇用への影響度合いを左右する構造
5. 新技術対応職業の出現と二面性
- ウェブ・マルチメディア開発者、データベース設計者・管理者等のデジタル関連職でスコア上昇
- 2023年からの技術進歩により画像・音声処理や自律的作業進行能力が向上
- 生成AI発展に伴う新職業創出の可能性も示唆され、技術進歩の二面性を確認
- AI影響が労働者の役割減少に直結するのではなく、新たな職業分野創出の可能性
記事は、生成AIが世界雇用の4分の1に影響を与える可能性があるものの、完全な代替は限定的であり、特に事務職と女性労働者への集中的影響と地域格差への対応が重要な政策課題であると結論づけています。