経済産業研究所(RIETI)が発行した、COVID-19流行下における緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が人流を通じて小売業績に与えた影響を分析したディスカッションペーパーについて解説したものです。
研究の背景と目的 新型コロナウイルス感染症の拡大により、政府は感染防止と経済活動の両立という困難な課題に直面しました。本研究では、非薬物的介入(NPIs)である政策措置が経済活動にどのような影響を与えたかを定量的に評価することを目的として実証分析を実施しています。
分析手法とデータ 月次の小売事業所データと人流データを接合し、統計分析を実施しました。事業所や立地先の固定効果を除去するため、一階階差の回帰モデルを構築し、政策介入ダミーの交差項を導入して効果を検証する手法を採用しています。
主要な分析結果 人流と商品販売額には正の相関があり、特に週末・休日の相関が強いことが判明しました。2020年の第1回緊急事態宣言では、周辺滞在人口10%減少で商品販売額が約4.9%減少すると予測されましたが、2021年の緊急事態宣言では、その効果は約2.0%減少に半減しており、政策効果の逓減が確認されています。
政策効果の特性分析 緊急事態宣言は主に休日の買い回り行動に影響を与え、平日は飲食料品のみに影響が見られました。これは消費者の行動パターンが曜日や商品特性によって異なる反応を示すことを明確に示しています。
政策的示唆と提言 感染症拡大防止措置は小売業績に大きく影響するが、その影響は平日・休日、商品特性によって異なることが実証されました。ビッグデータを活用し、売上減少の予測値を算出することで、迅速な支援審査が可能になると提言しています。
記事は、COVID-19対策における公衆衛生政策と経済活動のトレードオフを実証的に分析し、政策の有効性が時間とともに変化することを定量的に明らかにした重要な研究成果であることを示しています。