メキシコ政府によるIMMEXプログラムの完成品履物一時輸入禁止措置について解説したものです。
政令公布と規制内容
メキシコ政府は8月28日、IMMEX（輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム）政令の改正に関する政令を官報公示しました。この改正により、IMMEXプログラムの適用企業でも一時輸入ができない例外品目リスト（IMMEX政令別添I）に、履物（完成品）に関するHSコード6401項から6405項の50品目が追加されました。
IMMEXプログラムは、製品やサービスの輸出を条件として、当該オペレーションに必要な部品・原材料、機械設備の一時輸入（保税輸入）を認めるプログラムです。
国内履物産業の深刻な状況
産業縮小の実態: 国立統計地理情報院（INEGI）のデータによると、メキシコの国内履物産業は深刻な縮小傾向にあり、2019年から2024年までの期間で履物産業のGDP年平均成長率はマイナス3.1%となりました。
2024年の厳しい業績: 2024年は特に厳しい状況で、2023年と比較してGDPは12.8%減少、生産額は12.5%縮小し、1万958人の正規雇用が失われ、同産業の雇用は未曾有の低水準に達しました。
輸入急増と貿易不均衡
IMMEX経由の輸入急増: IMMEXプログラムに基づく履物（完成品）の輸入では、2024年と2023年を比較すると数量で2.6倍、金額で60.3%増という飛躍的な伸びを示しました。2021年の輸入と比較すると、数量では24倍以上、金額では12倍以上の驚異的な増加となりています。
輸出入比率の悪化: 履物の輸出量を輸入量で割った比率を見ると、2021年では6.59%だったものが2024年では0.88%となり、輸入量が輸出量を大幅に上回る構造に転換しています。
不正使用の実態と対策
税制優遇の悪用: マルセロ・エブラル経済相は8月28日の記者会見で、「一時輸入では国内市場に出回らず輸出向けのため付加価値税（IVA）を支払う必要がなかったが、履物を輸入した多くの企業はそれを輸出せずにメキシコ国内で販売していた」と強調しました。
業界からの陳情: 履物業界がこれらの不正について陳情したことで、今回の改正に至ったと説明されています。全国履物産業協会（Canaical）とグアナフアト州履物産業協会（CICEG）は声明で、この措置を「国内産業にとって歴史的な前進」であり、国内の生産、雇用、合法性を守る確固たる一歩であると表明しました。
記事は、国内産業保護を目的とした貿易制度の不正使用防止措置が、深刻な産業危機と雇用喪失に対する政府の積極的な対応として実施されたことを示しています。